
1-1-2 Untitled
球体である、しかし、微妙に傾いている。
何故か。傾いているわけではないのに、傾いていると見えるのか。その理由は不可解である。幾つかの穴や、削り取った跡のせいだろうか、否、多少いびつな球体であるからか。球体の中は不明であり、表面上の情報による確認だけが総てである。
球体であるが、体感しうる世界を球体に凝縮、抽象化したものかもしれない。とすれば、穴は即ち存在とも考えられる。これらは類似しており、規則性を持っているように見える。しかし、球体に於いて関連性があるとも考えにくい。個々の領域が一つの球体に偶然、自然発生したようでもある。
世界の原初への想い。硬くて丸く、時間の中に存在する《知》への遥かな観察。決して掴めない時間を手触りがあるような物体に置き換える試行。
さかのぼる時間の拡散を集結させる無謀な試みでもある。物的証拠を無視した脳内における原初の眺望、作家自身の冷めた熱望の形はひどく危うい形で、しかと、鎮座している不思議がある。
写真は若林奮『飛葉と振動』展より 神奈川県立近代美術館