
『火の時代』
人間はいつ人間になり得たのか、いつ他の動物との大いなる差異を獲得したのか。重大な岐路が隠された人類の秘密、歴史の始まりである。
広がる海を背景にネイティヴ・アメリカンの火らしきものを手にした横顔。頭部には鳥の羽根で作った装身具や耳飾りも見える。
遥かなる昔、まず水(海、川、湖、雲)があり、大気と大地があった。そして小さくてよく見えないが、狩りや牧畜の姿もあった。生命の糧である。
火が崇められるすべての中心にあった時代、脈々と受け継がれていく自然と共存の暮らしである。
男は祈っているのだろうか、目を瞑り口を閉じている。手のひらの白さ、手に触れる白球は、清廉潔白、争いのない平和への願望だろうか。どちらも赤い亀裂と欠損が生じている。時代は動きつつある予兆である。
火への絶対的な信仰、この原始への希求、言葉はなく森閑としている。
『火の時代』それは決して戻ることのない(戻れない)憧れの時代かも知れないが、常に次の時代の波が切迫している、いつの時代も変わらない。
写真は『マグリット』展・図録より