
地平線に対して垂直に立つ三人の男、頭上にはそれぞれ月がある。(真ん中の男が少し小さいのは遠近の関係で背中合わせに見えるが、距離がある)
この意味は何だろう。
それぞれ南、東、西を向いた男たちは、同一人物の分解である。
この画は動き(運動)が欠如している。静謐そのものであるが、夕刻の光景であるのに三日月が南中している。西空に見えるはずの三日月が頭上にあるのは矛盾した光景である。月が違うのか、地平線の傾きに問題があるのか。
月は地球を一月かけて回る。つまり一日では15°の移動でしかないが、地球は360°回転しながら太陽の周りを一年かけて公転する。
地平線は不動に見えるが、大きく回転しているし、少なくとも永遠の平行線ではない。
この画における静止状態。遥かなる地平線、眼に見える光景の矛盾。
見えること以上の物理的真理がこの地平線には隠れている。
人が地平に垂直に立つことでさえ、本来疑惑の対象になるべき事柄である。
眼に見えない力、重力や宇宙法則によって、わたし達は錯覚を余儀なくされ、見えない真実を見失う傾向にある。しかしそれは一方向から見えるものではなく、異なる時空からの見解であるから、分解された視点というものも肯定されるべき内実を含んでいる。したがってこれは、総合判断における隠喩の一パターンである。
(写真は国立新美術館『マグリッㇳ』展/図より)