『天才の顔』

 頭部の石膏像、顔面のみで後部や耳はなく、右目と左頬が欠けている。

 もしあなたの右の眼が罪を犯させるなら、それを抜き出して捨てなさい。五体の一部を失っても、全身が地獄に投げ入れられない方が、あなたのとって益である。(略)
 もし、だれかがあなたの右の頬を打つなら、ほかの頬をも向けてやりなさい。
 (『マタイによる福音書』5より)

 これらを暗示しているのだろうか、とするとキリスト(天才)を指しているのかもしれない。

 茫漠とした流れの上に長く細い板状のものが架かりその上に『天才の顔』が乗っている。漆黒の枝葉を茂らせた樹(霊体)が天才の顔を挟み間隔を置いて立っている。(キリストの前にも(死)は有ったということである)
 板状のものは人工的に切断されている(マグリットのなかでは板目=死を暗示しているらしい)。

 存在はしているが、重力を感じない存在である。浮遊しているようでもあり、定着・固定した時空(世界観)でもある。
 言うならば、天才とはこの様である。という冷めた客観的推測を感じる。

 写真は『Rene Magritte』展覧会カタログより