フィンランドの児童文学作家トーベ・ヤンソンの描く
「ムーミン」の物語。
ムーミン谷の小さな生き物たちは、冬眠します。
なんと、11月から4月まで。
お腹に松葉をたくさん詰め込んで、ぐっすり眠るのです。
ところがある年の冬、主人公のムーミントロールは、
新年を少し過ぎた頃に、目覚めてしまいます。
起きているのは、自分ひとりだけ。
孤独と恐怖に襲われたムーミンは叫びます。
「世界中が、どこかへ行っちゃったよ!」
親友のスナフキンに会いに行こうとしたムーミンは、
窓から飛び出し、生れて初めての冬を体験します。
1957年に発表された「ムーミン谷の冬」は、そんな
ムーミントロールの、冬の冒険が描かれています。
◆◆◆
やがてムーミンは、ひとりぼっちだと思っていた
冬の世界にも、たくさんの生き物が生きていることに
気づきます。
海では泳げないけれど、スキーが出来ることも知ります。
ムーミンの世界が、少しずつ広がって行く過程が見事に
描かれています。
そして、ムーミンの冬の冒険を支えたおしゃまさんは言います。
「どんなことでも、
自分で見つけ出さなきゃいけないものよ。
そうして自分ひとりで、
それを乗り越えるんだわ」
子どもの成長を見守る、この適度な距離感。
この適度な寄り添い方が、また見事です。
「ものごとってものは、
みんな、とてもあいまいなものよ。
まさにそのことが、
私を安心させるんだけれどもね」
そう。
確かなものなどなにもない。
ムーミンの世界は、フィンランドの雪のように、
深くて手ごわいのです。
私たちは、ムーミンのように突然ひとりぼっちで
冬の世界に取り残されてしまうこともあります。
それでも、耳を澄まし目を凝らせば
聴こえてくる、見えてくるものもあります。
勇気を出して、一歩を踏み出せば
新しい出会いも必ずあります。
~あなたの新しい1年が、
美しい響きと歓びに満ちて
幸せでありますように~
(2018年12月26日配信メルマガ・呼吸の奇跡☆声の魔法より)
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