小説『天地明察』読了におもふ | Field of Dreams

小説『天地明察』読了におもふ



来月12月5日に日本・トルコ合作映画『海難1890』が公開される。日本で座礁したトルコ軍艦を和歌山県串本町の漁民が献身的に救助、トルコ国民は恩義を忘れず、95年後のイラン・イラク戦争勃発でイランに取り残された日本人215人をトルコ航空が救助した有名な実話の映画化だ。
あまり知られていないが、1609年千葉県御宿沖で座礁したメキシコ帆船を御宿の漁民が救助したことから、日本とメキシコの間で善意の交流が生まれたことを、昔自分のブログで書いた。

http://ameblo.jp/hama-penguin/entry-10589918427.html

欧米列強国との不平等条約に苦しむ日本と最初に完全平等な通商条約を締結してくれたメキシコ。その背景には1874年メキシコ金星観測隊への厚遇があった。1874年(明治6年)は太陽・金星・地球が一直線に並ぶ重要な年、当時の天文学では地球と太陽間の正確な距離(1天文単位)がわかっていなかった為、列強諸国が日本で観測所を設置する中、国交の無いメキシコはダメ元で観測団を日本に派遣した。武器をもって外交関係を迫った欧米諸国と違い、科学技術で接近したメキシコに明治政府は意気に感じ、当時外国人の居住...さえ認められていなかった横浜に観測所を建てることを許可、メキシコ観測隊は御礼に日本人実習生参加を提案、現在の野毛山とフェリス女学院構内に観測所が建てられ大成功を収めた。観測隊長は帰国後日本との国交樹立を強く提言、1888年日墨修好通商条約締結に至った。(条約締結の御礼に明治政府は一等地を提供、現在もメキシコ大使館はアメリカより格上の永田町2丁目に一戸建て)
小説『天地明察』読了。江戸時代、大和暦を確立した渋川春海が主人公だが、和算の関孝和、囲碁の本因坊道策(マンガ「ヒカルの碁」で藤原佐為が主人公以前に乗り移った人)の描写が素晴らしい。
江戸時代の天文観測技術、日本独自の算術の結晶・関流【和算】を血肉とした明治の若者がメキシコ観測隊に実習生として参加し、コバルビアス隊長に『日本人は品位があり、紳士的で勤勉で、勇敢にしてかつ法に恭順な民族』と自著「日本旅行記」で言わしめたのかもしれない、とふと思った。