篤人だより(2)~2月1日付朝日新聞より | Field of Dreams

篤人だより(2)~2月1日付朝日新聞より

オーバーラップ(2)~ドイツでつかんだ距離感 @ドイツ・シャルケ 内田篤人


 アジアカップは初戦でヨルダン先制されて「やらなきゃ」とチームに火がついた。オーストラリアとの決勝で最終局面をしのぎきれたのは、追いつかれた韓国戦の反省があったから。同じ失敗を繰り返さないように試合を重ね、優勝にたどり着いた。 

 戦いの舞台はドイツに戻る。今回は、シャルケで周りとの信頼を深められた試合に触れたい。昨年12月のバイエルン・ミュンヘン戦だ。

 相対したのは、フランス代表でも攻撃の中心になるリべり。身のこなしの鋭さが、過去に対戦した選手と全く違った。1対1でやられないように。それだけを考え、彼を封じて快勝した。「お前の対人守備はよかった」と監督にほめられ、次戦から重要な仕事を任された。味方のCKの時、最後方に残って逆襲を狙う相手FWをマークする役だ。

 なぜ、リべりと球際で渡り合えたのか。シャルケの練習には手加減や調整がない。日々、190㌢台の相手とガツガツせめぎ合う。最初は車の運転もできないほど足の筋肉痛がひどかった。自然と筋肉は増し、日本から持ってきたジーンズがはけなくなった。

 ある間合いもつかんだサイドの攻防では、相手がクロスやドリブルを仕掛ける直前、歩幅やボールタッチが少しだけ長くなる。その瞬間を逃さず、大きな相手の懐に体をねじ込んでボールを奪う。肝心なのは思い切り。一瞬の迷いがミスに直結する。

 ドイツのチームの守備組織は、全般的に選手間の距離が短い。1人が目の前の相手に抜かれても、すぐ周りがカバーできる。Jリーグのように反則狙いでわざと転ぶ選手もいないし、アジアカップのように審判によって判断基準がぶれることもない。だから、誰もが迷わず勝負を挑める。

 ドイツに渡って半年。厳しい環境に引っ張り上げられる自分がいると感じる。日本でプレーしていた頃の自分は、もっと頑張れたし、もっと無理できたのだなと気づく。

 街を歩けば、気さくに「ウッシー」と声をかけられるようになった。ドイツでは「ウッチ―」をそう発音するかららしい。僕を育ててくれた鹿島や日本代表と同様、シャルケも自分のチーム。そう思える。

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日本代表の右サイドバック内田篤人(22)が、ドイツでの日々や、代表への思いを語ります。 (太字は私が印象に残った部分です)