W杯(01)開幕~西村主審・相楽副審デビュー@ウルグアイvsフランス戦10.6.11.
2010W杯南アフリカ大会が開幕しました。政治的意義なら95年ラグビーW杯初開催初優勝に譲るとして、(日本がニュージーランドに17-145の大会記録となる大敗を喫したのも忘れられませんが)規模が格段に違うFIFAワールドカップ開催を成功させれば、アフリカ諸国にとって大きな自信になることでしょう。
素朴でシンプルな開会式はホスピタリティーが十分伝わり、素直に感動しました
作為的映像が混在した北京五輪開会式は未だに一度も見てませんが
日本代表の試合に先立ち、日本人審判として、西村主審と相楽副審がグリーンポイントスタジアムでの開幕第2試合にピッチに立ちました
実は私たち夫婦は西村さんのファンです。07年夏、鹿島の試合のない日に、朝日新聞のタダ券で三ツ沢のバクスタ自由席でビール飲んでたのですが、目の前でアップする西村さんは暑い中30mダッシュを陸上選手のように繰り返し、年寄り審判やメタボ審判と一味違う説得力がありました。08年7月濃霧のFC東京戦は印象深いゲームでした。濃霧でほとんど見えない中、西村さんはよく走り、ボールホルダーの間近で笛を吹くことを徹底したため、選手にほとんどストレスを与えませんでした。
W杯出場を目指すようになってからは、ACL予選の中東で主審を数試合務めたり、クラブW杯で第4審判を務めるなど、国際経験を積んで来られました。
AFC公式サイトで西村さんのインタビューが掲載されています。(巻末で全文紹介します)
http://www.the-afc.com/jp/features/26756-cultural-caution-from-nishimura
11日に開幕するW杯南アフリカ大会で、日本代表よりも先にピッチに立つ日本人がいる。西村雄一主審と相楽亨副審だ。韓国の鄭解相副審とのトリオで、大会初日にA組のウルグアイ-フランス戦を担当する。
3人は07年に韓国で開かれたU17W杯からチームを組んできた。昨季Jリーグ優秀審判賞を受賞し、3人のリーダー格の西村主審は5月下旬に、「1試合1試合決勝戦のつもりでやる。われわれの持っている力を選手のために尽くしたい」と意気込みを語った。
4年前のドイツ大会では上川徹主審、広嶋禎数副審、金大英副審(韓国)のトリオが3位決定戦を含む3試合を任された。開幕日のジャッジは、大会を通じての判定基準に影響を与えるため、責任は重大だ。西村主審は「FIFAが求めているのは、けががなく、それでいて見ていてわくわくする展開」と説明する。
仮に日本と韓国が勝ち進めば、3人は大会途中で担当から外れる可能性が高くなる。それでも、相楽副審は「自分の国が勝つと帰らなければならないが、やはり自分の国が勝たないと結局弱い国の審判という立場になる」と、日本代表の健闘を願っている。 (2010/06/09)
レフェリングが難しい試合です。出場32チームの内、31番目と32番目に滑り込んだ、優勝経験のある両チーム、片や古豪・練達のウルグアイ、片や【ゴッドハンド2世】アンリ擁するフランスです開幕初日のこの試合で、FIFAが要求する世界基準のジャッジを示さなければなりません。前半12分、フランスのエブラ選手に西村さんW杯初
ウルグアイの選手がカウンターに入ろうとしたところを、手を使って止めました。
そして前半19分、あのリベリー選手に
やはりウルグアイの選手がカウンターに入ろうとしたところを、手を使って止めたものです。立て続けに提示することにより、このゲームのジャッジ基準を選手に示します。
それにしてもW杯のカメラワークはすごいスカパーのJリーグ放送の固定カメラでの映像を見慣れているもんだから、一体何台のカメラで撮っているんだろうと思ってしまいます。ピッチ上の選手やレフェリーも気を抜けません西村さんがピッチで滑って危うく転びそうになるところまでカメラが追っかけていました
相楽副審も的確にオフサイドを判定します
旗を揚げる角度の違いはバクスタ側の遠い位置でのプレーとか、主審が気づいてくれないとか
FIFAのファウル基準改正により、副審もハードワークが要求されることになりました。Jリーグでも副審が選手の手に気をとられるあまり、足元のボールから目を離すミスが見られるように昨年末スカパーのレフェリー座談会で、ゴール前のオフサイド判定が予想外に難しいことに気づかされました。副審から見れば、ゴール前は選手がすごく重なるためにオフサイド判定がしづらい、一方主審からすると、副審が旗を揚げない以上、オフサイド判定はできないというのです。これはなるほど仕方が無いと納得しました。
前半は0-0で終了。フランスが押しているように見えますが、ウルグアイも虎視眈々とカウンター攻撃を狙っています。どうしても勝ち点3ほしい両チームは後半ヒートアップします後半23分、フランスのトゥララン選手のスライディングがアフターで足に入ってしまい
傷んだ選手に代わって、ウルグアイのキャプテン、ルガーノ選手が抗議
トゥララン選手が応戦(口応え)したもんだからもみ合いに(手は使いません)
西村さん、少し間を置いてから冷静に選手をプレーに戻しました
その後も西村さんは冷静沈着にプレーを裁きます
後半36分、ウルグアイのロデイロ選手のこのプレースタッドがすね当てのない足首を襲った危険なプレーでした
西村さん、カードの色を確認してから(カードの裏に試合中もらった選手の番号書いているのかもしれません。)
2枚目ので、今大会初のレッドカードを提示して退場を命じます。
途中出場したロデイロ選手は後半20分にすでに1枚目のもらってました。
相楽副審がフランスのアンリ選手にオフサイドの判定
カメラワークもですが、リプレイや編集画面などもW杯はすごいこうしてもらえるとよくわかります相楽副審GJ
1人少なくなったウルグアイは引き分け狙いに出ます。フランスはどうしても勝ち点3ほしいところ。終了間近、フランスのラストチャンスのFK時間稼ぎを計るウルグアイのキャプテン、ルガーノ選手に遅延行為で
結局スコアレスドロー0-0で試合終了。多数の選手が西村さんや相楽さんに握手を求めに来ました
イエロー7枚出ましたが、試合が荒れたわけではなく、翌日のメディアでも好評価されていました
次の西村さんの試合が楽しみです
日本人よ、ピッチ上ではより勇敢でオープンであれ;西村雄一氏語る2010.1.28.
日本人レフリーやプレーヤーたちは、ピッチ内外での日本人特有の謙遜や丁寧さ、そして礼儀正しさへの厳しい固守でよく知られている。そのため、メディアでも彼らの人の良さがしばしば非難され、イビチャ・オシム前監督もこの日本人気質についてはよく話題にしていた。2010FIFAワールドカップの担当審判候補の1人である日本人のトップレフリー、西村雄一氏は、この深く根付いた文化的特徴が世界のサッカーで戦ううえでは不利になりかねないと思っている。
優しすぎる気質
このメッセージは驚くべきものかもしれない:
日本サッカーの優雅な環境内ではうまく機能する日本人の徹底的に控えめなスタイルは、グローバルなサッカーのラフで無秩序な状況では逆の作用をもたらすだろうということだ。
この矛盾は、国内外の両方でレフリーを務める西村氏が指摘することと完全に一致している。
「概して日本人レフリーはシャイで、敏感で、非常に礼儀正しい」と西村氏は語った。
「Jリーグでレフリーはピッチ上であまり話したり叫んだりする必要はない。プレーヤーやほかの審判(アシスタントレフリーなど)に何が言いたいかを伝えるにはアイコンタクトやジェスチャーで十分なのだ。」
「私を含めて日本人審判は国内の試合でより表現をしていく必要がある。我々はほとんど話さず、ほとんど大声で叫ぶことはない。」
インターナショナルの舞台
しかし、西村氏はこの希薄なアプローチが国際試合の舞台では裏目に出ることがあると知っている。
「このアプローチは、お互いによく知っており、誰もが国のサッカー文化を理解している国内のゲームであればよい。しかし、国際試合はまったく異なるケースだ。」
「無常だが、もしJリーグのやり方を国際試合でも行えば、それは通用しない。プレーヤーのパワーに圧倒されてしまい、カルチャーショックを受けることになるだろう。」
「最終的に、プレーヤーや監督たちの厳しいプレッシャーに押しつぶされてしまう。そして、自分自身を見失い、さらに多くのミスを重ねてしまう。」
戦士のスピリット
西村氏は日本のチームも同様の事柄を抱えているとし、彼らが持つ戦士のスピリットを呼び起こす必要があると信じている。
「これは日本のサッカーチームも同様だ。もし日本代表が南アフリカで良い結果を残したければ、特に彼らの目標であるベスト4入りを果たすためには日本の文化をしばし忘れ、できる限り激しく戦わなければならないと強く思う。」
オシム元監督もしばしば、チームが対戦相手へのリスペクトを見せすぎることにひどく怒っていた。
「サッカーのピッチは戦いの場だとだれもが知っている。強い者だけが生き残り、勝つのだ」と西村氏は強く述べた。日本人レフリーが国際試合での成功をおさめるためのシンプルなルールを西村氏は示した:勇気を持ってオープンになること。
「国際試合のレフリーを成功裏に行うためには、勇敢にオープンで、度胸を持たなければならない。意思決定を恐れてはいけない。これらは、国際舞台で成功をおさめるために全ての日本人レフリーに必要な要素だ。」
- Written by Tan Boon Piaw; Edited by R. Ravi Kumar
AFC公式サイト《コラム&インタビュー》より