ソニアと話してきた。
いつもどおり、病院のベッドで眠っている彼女に向かって一方的に喋っていただけだがそれも今日で終わり。
終わらせる。
明日からはいつ目覚めても、ソニアが苦しまずに生活できる朝が待っている。

 夜明けとともに俺とナギは環状線に乗り込んだ。
目的地は東京都心、グローブマン社の本社ビル。


16.親▽新


 俺とナギは、父親は同じだが母親が違う。
父は二人の女性を娶り、それぞれの母親に一人ずつ子供を産ませた。
カトリーナ・グローブマンは、俺が9歳の時にこの世を去った。
ナギの母、マヤ・グローブマンもそれから5年後に。
悲しくはなかった。
それはきっと、父の教育方針が大きく関係しているのだと最近になって思う。
「母親は再婚してまた作れば良い。
家政婦なり使用人なり、お前たちの世話をする人間はいくらでもいるんだ」と。

 本社は60階建ての超高層ビル。
俺達兄弟に与えられているパスは、30~59階を除いて立ち入り可能。
最上階へ至る「60」のボタンを押してエレベーターを上昇させる。
東京の街並みが足元に消えていく。

 降りた先は長い通路。
ガードマンや暗証番号の入力も片付けて、俺たちは社長室の扉の前に立つ。
ノック。
中から「どうぞ」という若い女性の声。
秘書の声だというのはすぐに分かった。
開けて中に入ると、180度都心を見下ろせる一室の中程に父の姿を見つけた。
椅子に踏ん反り返って座るその後姿がゆっくりと俺の方を向き、居直る。


苺ましまろってそもそも何だろ-タイフーン

「父さん、お話があります」

 俺は父の顔を見つめたまま話す。
睨みつけるという表現の方がしっくりくるかもしれない。
あの日覚悟を決めた。
父の返答次第では、俺自身の手で引導を渡すことも辞さない覚悟を。
静かに扉の閉まる音が、室内に重く響いた。