みるということ 9


これは、二人の別れの話。

2月に入ったばかりのある日、二人のとっての終わりが始まった。

きっかけは、12月に香子の父の叔父が軽い脳梗塞で倒れたことだった。

その日も、香子は図書館にいた。いつもと違うのは、今日が本当は塾のある日だったことだ。

今日は塾に行かないで図書館にいることは、授業が終わって香子が掃除当番に行き、淳が陸上部に行くときに話してあった。香子は、本当はもっと早くに話そうと思っていたが、一日中タイミングを逃して結局追い詰められた放課後に話すことになったのだ。話が切り出せなかった理由は、香子は自分でも理解していなかったが、帰り道で話さなくてはいけないことを話したくなかったからだ。

そしていつものように淳が図書館に迎えに来る。香子はいつもと違い勉強をしておらず、小説を読んでいた。淳が声をかけると、何も言わずひらりと手を振ってから、本を棚に返してきた。

「何読んでたの?」

図書館から出てから、淳は何気なく聞いた。

「聞いてもわかんないだろうけどさ」

香子は少し笑って答えた。

「長いお別れ」

そして、かばんを肩にかけた。