大体クラスの面子がそろってきたとき、最後のほうになってから淳は教室に来た。淳は本当にこの教室に入るのがいやだった。

京町中学校の教室棟は3階建てで、各階に10個の教室がある。そして、1階は1年、2階は2年、3階は3年が教室として使うことになっていた。つまりは1年G組の上は2年G組と3年G組になる。このG組の縦一列は教室棟の端にある。教室棟の隣には以前は実習棟があり、各階で渡り廊下で教室棟とつながっていて、音楽室や理科室があった。しかし、実習棟は15年ほど前に火事で半焼した後に取り壊されて、今はもうない。実習の類はA組の奥にある特別教室や別棟の図書棟を使って行われている。そして、各学年のG組の教室だけが、かつての廊下の幅の分だけ教室が横に幅広くなっていた。

だが、淳にとってはもうない校舎でもないものとして扱うことができなかった。

生徒が駆け込んでくるのだ。実習棟は30年以上建っていたというからその間に何かの事故や病気でなくなる生徒も当然いただろう。そしてそういう生徒がたまに学校に来る。すると、もう向こうに実習棟がないことを知らないから、今はもうその向こうには何もない廊下の突き当たりの壁の向こうへ走っていく。あるいは向こうから駆け込んでくる。淳は1年のときはG組とは違うクラスだったし休み時間に遊びに行ったときぐらいしか見なかったからいいが、授業中など油断していると結構驚くだろう。もちろん彼や彼女はただ廊下を行き来しているだけだというつもりだろうし、害があるわけではない。でもちょっとやめてほしい。

1階のときはまだ心構えのしようがあっただろう。非常口代わりに外に通じるドアがあるから、生徒が出入りしていてもおかしくない。でも2階では、そうもいかない。

勘弁してほしいなあ、と思いながら、淳は自分の机に向かう。残っている空き席が少ないから見当がつけやすい。よりにもよって一番後ろの列だ。

机にカバンを音がするほど投げ出して椅子に座る。新しいクラスの面子を見ると、結構知った顔があった。半分は同じ小学校からの持ち上がりだから見たことがあってもおかしくないし、淳はなんだかんだと顔が広いほうではあるので新しいクラスメイトについて気後れすることは心配していなかった。

やがて新しい担任が入ってきた。わかりやすい授業をするので評判のいい、そのため生徒に人気のある数学教師が今年の担任だった。この点は幸運だと思う。クラスの雰囲気は担任のよしあしで決まるのだから。お決まりの簡単な自己紹介があり、クラス委員決めがあり、掃除の班分けが決まり、給食当番が決まる。淳はためらいなく体育委員になり、中庭からのローテーションの掃除当番になり、来月の2週目に給食当番をすることになった。

そうして午前中が終わり、今日はこれで終了ということになった。淳はやれやれと思いながら陸上部の練習に行くため立ち上がった。そしてふと気づいた。

だれも通らなかったな、と。