これが僕の始めてのときの話だ。

僕は、それまで僕に見えている人たちの中にもう死んでいる人がいるなんて考えたこともなかった。テレビでみる怖い話のように、事故にあって血まみれの人とか、追いかけてくる人とか、そういう意味で生きている人と違う人ではなかったからだ。

でも僕は、僕の人生がこういったことに埋め尽くされ、普通でないものになるとは、一度も考えなかった。お姉さんの一件以外、何の事件もなかったからだ。もっと能力の強い人は、もっといろいろなものを見て不便だろうし、大変だろうと思う。でも僕は、声も聞こえないし、見えるのも普通に生きていた頃の姿をした人たちだけだ。意識すれば、あ、この人は生きている人とは違うな、とわかるけれど、たいてい僕に何かしてくるわけでもない。助けてほしそうなときは助けるようにしている。ただ、助けるときも、僕が表立って生きている人に働きかけることはしないないようにしている。僕には責任をとることはできないからだ。そして、それ以外のことには目を閉じる。

あのときの、おばあさんの恨めしそうな、訴えるような目は、もう見たくない。