『怪物』(2023年) #イオンシネマ草津 #是枝裕和 #坂元裕二 #坂本龍一 #怪物をみた | HALUの映画鑑賞ライフのBlog

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6月2日(金)公開の是枝裕和監督の最新作で、2023年・第76回カンヌ国際映画祭で脚本賞(担当:坂元裕二)と、LGBTQ+問題やクィアを対象に扱った優秀な映画に贈られるクィア・パルム賞とを同時受賞した作品として話題をさらっている、映画『怪物』を、先日の6月7日(水)にイオンシネマ草津まで年老いた父親と一緒に鑑賞に出向いて来ました。

 

予想以上に、あまりにも出来映えが良かったので、皆さんにも是非ともご紹介致したく、現状、私は、昨年に劇場鑑賞した作品も未だ全てブログ記事化出来ていない上に、今年の4月に劇場鑑賞した4作品の紹介も出来ていない状態ではありますが、鑑賞してきた順序は前後いたしますが、今回は、取り急ぎ、本作品についてブログ記事にして採り上げたいと思います。

 

 

今年度の17本目の劇場鑑賞作品。

(今年度のイオンシネマ草津での13本目の作品。)

 

 

 

「小学校での事件の真相を多面的に迫る秀逸な脚本(23.6/7・劇場)」」

ジャンル:人間ドラマ/ミステリー

製作年/国:2023年/日本

製作:「怪物」製作委員会(東宝、ギャガ、フジテレビジョン、AOI Pro.、分福)

制作会社:AOI Pro.

配給:東宝 / ギャガ

公式サイト:https://gaga.ne.jp/kaibutsu-movie/

上映時間:126分

上映区分:一般(G)

公開日:2023年6月2日(金)

製作総指揮:臼井央

企画製作:川村元気 / 山田兼司 / 伴瀬萌 / 伊藤太一 / 田口聖

製作:市川南 / 依田巽 / 大多亮 / 潮田一 / 是枝裕和

撮影:近藤龍人

音楽:坂本龍一

脚本:坂元裕二

監督:是枝裕和

キャスト(配役名):

安藤サクラ(麦野早織) / 永山瑛太(保利道敏先生) / 黒川想矢(麦野湊/早織の息子) / 柊木陽太(星川依里 / 湊の同級生) / 高畑充希(鈴村広奈 / 保利の恋人) / 角田晃広(正田文昭 / 小学校の教頭) / 中村獅童(星川清高 / 依里の父親) / 田中裕子(伏見真木子 / 小学校の校長) ほか

 

 

【解説】

「万引き家族」でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した是枝裕和監督が、映画「花束みたいな恋をした」やテレビドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」などで人気の脚本家・坂元裕二によるオリジナル脚本で描くヒューマンドラマ。音楽は、「ラストエンペラー」で日本人初のアカデミー作曲賞を受賞し、2023年3月に他界した作曲家・坂本龍一が手がけた。

大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子どもたちが平穏な日常を送っている。そんなある日、学校でケンカが起きる。それはよくある子ども同士のケンカのように見えたが、当人たちの主張は食い違い、それが次第に社会やメディアをも巻き込んだ大ごとへと発展していく。

そしてある嵐の朝、子どもたちがこつ然と姿を消してしまう。

「怪物」とは何か、登場人物それぞれの視線を通した「怪物」探しの果てに訪れる結末を、是枝裕和×坂元裕二×坂本龍一という日本を代表するクリエイターのコラボレーションで描く。

中心となる2人の少年を演じる黒川想矢と柊木陽太のほか、安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、高畑充希、角田晃広、中村獅童、田中裕子ら豪華実力派キャストがそろった。

 

2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され脚本賞を受賞。また、LGBTやクィアを扱った映画を対象に贈られるクィア・パルム賞も受賞している。

 

(以上、映画.comより、引用抜粋。)

 

 

 

  是枝裕和監督×脚本・坂元裕二×音楽・坂本龍一による夢のコラボ作品。

 

是枝裕和監督の最新作にして、監督デビュー作の『幻の光』(1995年)以来となる監督自身が脚本執筆をしない一作であり、特に子役には、あらかじめ台本を渡さずに演技の直前に口伝で演技指導を行なう演出法でも定評のある是枝裕和監督と、台詞の一語一句に拘りを持って「言葉」を大切に巧妙な脚本を練られることでも定評のある人気脚本家・坂元裕二さんとのコラボレーションによる化学反応が見どころであった本作では、是枝裕和監督にしては珍しく、メインの子役二人に対しても今回は、坂元裕二さんの脚本による台本を事前に手渡して台詞を大切にしてもらったそうで、かねてからお互いをリスペクトし合っていた同士の念願の共同作業が実現。

加えて、是枝裕和監督がかねてから懇願していた坂本龍一さんから楽曲提供も本作で一応は実現は致しましたが、作曲家・坂本龍一さんが今年3月に帰らぬ人となり、今作が遺作となってしまいました。

 

 

  脚本賞に輝く坂元裕二さんの巧妙な脚本仕立てに感服!

 

今回、第76回カンヌ国際映画祭で脚本賞に輝いた坂元裕二さんの脚本は、あたかも黒澤明監督の映画『羅生門』的な構造でもあり、ひとつの出来事について、観客を、三者三様の視点に立たせる3幕の多層構造の脚本から描く見事な人間ドラマになっています。

 

 

故に、時系列が行ったり来たりしますが、それぞれの章に伏線が仕込まれている仕組みで、それをその次の章で伏線を回収し真相解明していくといった手法でもあります。

 

 

  あらすじ

 

舞台は大きな湖がある郊外の町。

第1幕の主人公はシングルマザーの麦野早織(安藤サクラさん)。

ひとり息子の湊(黒川想矢くん)が、自分で髪の毛を切るなど、不可解な行動をすることに悩んでいるのでした。

 

 

ある夜、自宅マンションのベランダから近くの繁華街のガールズバーが火災に見舞われているのを眺めている最中に、湊から「『湊の脳は豚の脳と入れ替わっている』と担任の先生に言われた」と涙ながらに告白されます。

 

 

早織は直ぐさま小学校に乗り込み、担任の保利先生(永山瑛太さん)によるモラル・ハラスメント(倫理・道徳的に反した精神的暴力行為)と暴力行為を訴えるのでしたが、小学校の校長・伏見(田中裕子さん)は、心ここに在らずといった様子。

 

 

後日、学校に呼ばれた早織は謝罪を受けるが、保利先生は「誤解があったみたいで残念です。」と述べ、校長もただ淡々と型どおりに報告書を読み上げるだけ。

また、謝罪をしている最中に、肝心の保利先生は飴玉をほおばるなど真剣味に欠ける点も、謝罪相手の早織の感情を逆撫でし、火に油を注ぐ始末でした。

 

 

このように、映画のタイトルでもある「怪物」とは、学校側を指しているのでしょうか?

田中裕子さん演じる小学校の校長・伏見真木子役の怪演も相俟って、先ずはそう思わされます。

 

 

しかし数日後、保利先生は麦野湊の母・早織に「息子さん。いじめやっていますよ!」と言い放つのでした。

早織は、息子の湊が知らないうちに着火式棒状ライターを持っていること、湊が、いじめているとされる同級生の星川依里(柊木陽太くん)の腕に、火傷の痕があることを知るのでした。

 

学校の事件は一応の決着をみるのですが、ある嵐の朝、湊が姿を消すというところで第1幕は終わります。

 

 

そして、保利先生と学校側の視点で描かれる第2幕に切り替わりますと、事件自体の真相はそう単純な構造ではないことが分かり、本来的な「怪物」は、他にいるかのような様相を帯びてきます。

モンスター・ペアレンツと化したシングルマザー・早織役の安藤サクラさんを指しているのか、それとも・・・。

 

 

そして、第3幕では、麦野湊、星川依里はじめ5年2組の生徒達が中心の視点となります。

 

 

 

このように、真相が明確に垣間見えるまでに長い時間焦らされるのみならず、伏線の回収や時間軸が行ったり来たりするので、章毎に、ハッキリとした暗転を入れるなど、もっと明確な区分けをした章立てにしていた方が、より親切設計な作品になっていたかもと、少々その点はやや惜しくも思いました。

 

 

ただ、出演者全員がハマり役とも言えるほど、安藤サクラさん、永山瑛太さん、田中裕子などの俳優陣の緩急を付けた演技が素晴らしくて、そういったやや複雑な脚本仕立ても、決して苦にはなりませんでした。

 

 

むしろ、坂元裕二さんが今回練り上げた、同調圧力や事なかれ主義、不寛容な社会について問いかける台詞の数々もズシリと胸に突き刺さってきました。

 

 

カメラは子供達に優しく寄り添い、子役の演出に特に定評のある是枝裕和監督が引き出す彼らの繊細な表情に目を見張ってしまいました。

 

 

音楽を手掛けられた故・坂本龍一さんは、本作では、ガン闘病中の最中にあったことから、決して満足がいく楽曲提供は出来なかったようでしたが、そんな中でも、ピアノ曲「Aqua」が流れるエンディングの光景の美しさが脳裏に焼き付き、優しくも、力を振り絞った旋律が耳から離れなかったですね。

 

○Ryuichi Sakamoto - 'Aqua (from Playing Piano for the Isolated)' (Official Audio)

 

 

 

  しいて、難点を挙げるとすれば・・・。

 

 

 

しいて、難点を探して挙げるとすれば、田中裕子さんの実年齢(68歳)から察しますと、現行の60歳定年制を鑑みますと、小学校の校長職を演じるには、やや年齢が行き過ぎた感もありましたね。

私の従兄が、ちょうど今年の春に役職定年の60歳を迎えるまで小学校の校長職に就いていたことを考えますと、田中裕子さん演じる校長先生は、かなり高齢な印象でしたね。

 

  私的評価:★★★★★(文句なしの満点)。

 

とは言え、本作品は、私的には、『誰も知らない』(2004年)、『万引き家族』(2018年)に次ぐ是枝裕和監督作品における随一の傑作かとも思いました。

ですので、五つ星評価的にも★★★★★の文句なしの満点評価に値する作品かと思いました。

 

※尚、過去に『万引き家族』についての私的な評価としましては、映画の出来映え自体には満点評価に値するとしながらも、その作風が娯楽作品として観るにはどうも後味が良くない点から、私個人的な映画の好みの問題として、高評価ながら四つ星評価の★★★★(80点)の評価には致しましたが、今回の映画『怪物』では、ラストがバットエンドなのかハッピーエンドなのか観客に答えを完全に委ねる形にはなっていましたが、それでも決して後味が悪い訳でもなかったですので、満点評価も相応しい作品かと思いました次第です。

 

 

○映画『怪物』予告映像【6月2日(金)全国公開】

 

 

 

○人気脚本家・坂元裕二さんの代表作『花束みたいな恋をした』

 

 

 

 

 

▲坂本龍一:『怪物』サウンドトラック(税込定価:2,310円)も購入。

 

▲収録曲:計7曲

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回も最後までブログ記事をお読み下さり有り難うございました。