『終の信託』(2012年) | HALUの映画鑑賞ライフのBlog

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今回は、昨日に劇場上映終了をしてしまう映画を、ハシゴ観鑑賞して来た2本の映画のうちの『終の信託』をご紹介致します。

「終末期医療と法解釈の限界(12.12/7・劇場)」
ジャンル:人間ドラマ
製作年/国:2012年/日本
配給:東宝
時間:144分
公式サイト:http://www.tsuino-shintaku.jp/
公開日:2012年10月27日(土)
監督:周防正行
出演:草刈民代、役所広司、浅野忠信、大沢たかお他

PG12

終の信託・チラシ

終の信託・チラシ裏



滋賀県大津市のシネコンにて、会員サービスデーに鑑賞。

朔立木(さく・たつき)さんの原作小説は未読。
劇場での予告編のみを観て鑑賞に臨みました。


終の信託・折井&江木 


率直な感想と致しまして、
「脳死」とは言えない「植物人間状態」では、いったい人と言えるのだろうかといった、所謂、<尊厳死>について真っ正面から捉えた作品であり、医師と患者という「信頼」という関係の垣根を遥かに越えた、精神的な「愛」と「絆」で結ばれた、呼吸器内科医師・折井綾乃(草刈民代さん)と、その患者・江木泰三(役所広司さん)との間における、切実な「愛」を前提にした、<尊厳死>について、終末期医療と法解釈という画一的な秩序で裁けるのか否かといった、人間が生活を営む上での秩序を保つルール作りの限界を描いたラヴ・ストーリーでしたが、非常に重いテーマながらも上手く描き切っていたと思いました。


終の信託・折井&江木・診察


簡単なストーリー内容としましては、
折井綾乃(草刈民代さん)は、患者からの評判も良い、呼吸器内科のエリート医師。しかし、長期間、不倫関係にあった同僚医師の高井(浅野忠信さん)に捨てられて、失意のあまり自殺未遂騒動を起こしてしまうのでした。


終の信託・高井


そんな綾乃の心の傷を癒やしてくれたのは重度の喘息を患い入退院を繰り返していた患者・江木泰三(役所広司さん)の優しさでした。
綾乃と江木は心の内を語り合い、医師と患者の垣根を越えた深い絆で結ばれるのでした。
しかし、江木の病状は悪化していき、自分の死期が迫っていることを自覚した江木は綾乃に懇願するのでした。
「信頼できるのは先生だけだ。最期のときは早く楽にして欲しい」と・・・。
と言ったストーリーでした。

この映画のタイトルの『終の信託』とは、「命の終わりを信じる者に託すこと」との意味らしいのですが、これはドキュメンタリー映画『エンディング・ノート』の様に、本人自身や家族などに、本人の意思(グッド・ウィル)が予め同意の下に、明確であれば、特段の問題もないのですが、それも無しに、医師の判断で延命治療を怠る行為。いや、安楽死させてあげる行為といったことが許されるのかといった終末期の判定の問題のみならず、多くの重大な社会的な諸問題をはらんでおり、単なる通俗的なラヴ・ストーリーで片付けられる様な問題ではないかも知れません。

また、そもそも、医療現場で起きている個別具体的な問題と、検察権力における、条文主義、先例・判例主義の司法判断といった、ある種の普遍性を求める問題とは相容れない、なじまない問題でもあって、医療現場はすべてマニュアル通りに事が運ぶものでも無く、その点で、終末期医療と法解釈の限界とをクローズアップした点は注目に値する作品だった様にも思いましたね。

ただ、当の監督本人の周防正行監督としては、それらの問題のテーマ性云々といった、『Shallweダンス?』(1996年)や『それでもボクはやってない』(2007年)の様な、所謂、入門編的な映画として撮った訳ではなく、むしろ、人間が帰来に持つ性分としての感情の発露を描きたかったそうですので、通俗的なラヴ・ストーリーかも知れないですが、そこに見て取れる、人と人とがある関係性を持って対峙したときに持つ、人間臭さは見事に描いてあった様には思いましたね。


終の信託・折井・検察庁


その中でも、特筆ものだったのは、検察庁の取調室での検事・塚原透(大沢たかおさん)と折井綾乃(草刈民代さん)との遣り取りの長台詞には圧巻モノでしたし、重厚な演技を魅せてくれましたね。


終の信託・検察庁の取調室
終の信託・検事・塚原透 


また、患者役の江木泰三役演じる役所広司さんの重度の病人役の迫真の演技も素晴らしかったですね。


終の信託・江木泰三


ただ大きなお世話かも知れないですが、周防正行監督は、自分の実の妻である草刈民代さんの肌を露わにしたベッドシーンを撮ることには何の躊躇もなかったのかなどと下世話なことも考えたりも致しましたね。


終の信託・折井&高井ベッドシーン


私的な評価と致しましては、
テーマが非常に重い主題でありながらも、それらのテーマの抱える問題点もさることながらも、豪華俳優陣による重厚な演技により、人間が帰来に持つ性分としての感情の発露を上手く表現していて素晴らしい出来映えの周防流のラヴ・ストーリーの映画だったとは思いました。
ですが、この作品における、周防正行監督の製作のご意向が、あくまでも医療現場と法曹界との乖離などといった諸問題などについての問題提起的な映画ではなかった点がチョッピリ残念ではありましたので、その点を差し引きましても、★★★★(80点)の高評価に値する映画かと思いました。

お勧め作品です。

●映画『終の信託』劇場予告編
 

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