今日は、あの人の命日だった。

東北の大震災の年のこの日に、あの人は居なくなってしまった。

今日はその場所へ行って、花を手向けてきた。


毎年、この日になると、生きていてくれればとそればかり思う。

生きてさえいてくれれば。


居なくなる少し前の連絡の返事に、メールではなく電話をすれば良かったとか、同じ事ばかり悔やんでしまう。


悔やんでも、あの人は生きてはいない。


毎年、この日が来ると、あの人を思い出す。

悪かった時の事ではなく、良かった時の事を。


優しい人だった。

真面目な人だった。

もしかして、もっと長く一緒に過ごしていれば、嫌なところもあったかも知れない。

いや、たくさんあったのだ、それまでの月日でも。

だけども、それらは嫌いになる要素ではなく、離れてしまった時は、そこに帰りたくて仕方無かった事すら思い出す。


あの人が居なくなって、それは叶った。

だけども、やっと入る事が出来たその家には、もうあの人は居なかった。


遺品を整理し、あの人の愛していたものを、持ち帰らせて貰った。

いつか誰がが弾いてくれると良いなと思いつつ。


私には弾けないけど、数年ぶりに鳴らしてみようかな?と思う。

あの人に、「ヘタクソ!」と叱られるだろうか…