No Zhuanke No life 台日篆刻交流展 参加後記

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 2017年3月16日〜23日、台北の友生昌藝術空間において、「No Zhuanke No life 台日篆刻交流展」が開催された。本展示は、日本と台湾の若手篆刻家による交流展であり、日本人2名(松尾碩甫、川内伯豐)・台湾人2名(薛硯山・鄭俊逸)の計4名の作品約120点が会場に並んだ。

 

   

 

 伯豐は、刻印20点、印屏8点、書2点、刻字2点の計32点を出品。販売を希望する作品には価格を付けた。驚いたことに、開会と同時に様々なお客さんが見え、作品がみるみるうちに売れていった。特に刻印の頒布は堅調で、結果から申し上げると、価格を付けた作品の七割が収蔵家の手に渡ることとなった。私以外の3名も多数の作品が購入され、展覧会は成功裏に幕を閉じた。それもこれも展覧会を企画・運営してくれた若き台湾の篆刻家2名とそのご家族・ご友人、またギャラリーのスタッフの方々のご尽力と応援のお陰である。この場を借りて改めて謝意を申し上げたい。

 

 

 

 伯豐は、搬入搬出を含め10日間台湾に滞在し、ギャラリーでご来客の応対や友人・知人らとの交流を通して過ごした。その中で体験し、気づいたことを幾つか書き留めておきたい。

 

 

●石印材に対する高い意識

 

 はじめに驚かされたのは、台湾人の石印材に対する意識の高さである。ギャラリーの特性でもあるが(友生昌は印材に長けた書道用品展)、篆刻を求める人の多くは、何の石を使っていて石の質がいいか悪いかを重視することが多かった。当然ながら、印面の文字の内容や表現も審美の対象であるが、日本と根本的に違うところは、顧客が作品を見る際に購買意識を持っており、買って収蔵するかどうかという視点で作品を見ているという点であった。

 あるコレクターは、印面の表現と印材のクオリティは共に佳くあるべき、と仰っていた。このこと、このように文字列にすると当然のことに他ならないが、関東で篆刻をやってきた自分の感覚としては、印面や側款への意識ばかりで、印材の品質をそこまで重視しておらず、その方面の意識や知識が足りないことを痛感させられた。

 台湾人作家らはそのことをよくわかっていて、上質の印材をふんだんに使い価格も相応であった。日本では、高い印材だからといって相応の値段を付けた所でなかなか容易に売れるものではないが、台湾ではむしろ安い印材に彫られた安い作品はあまり人の目を引かなかった。これらのことは今後の活動に活かしたい。

 

 

 

 

●台湾篆刻家の持つ日本篆刻への疑問

 

 ある若手篆刻家と話をしていた際に、次のような話題となった。

 日本の現代篆刻家の作品が集められた本(おそらく芸術新聞社編「篆刻オールスターズ」など)を見ると、類似した作風が多くて不思議である。芸術というものは、古典を渉猟し、そこから様々な要素を吸収し、自ずと自身のスタイルが醸成されるのではないか。しかし彼らの作品を見ると、師匠の真似しているだけにしか見えないのだが?という話であった。

 久々に作風の類型化の問題に触れることとなった。日本の書壇で活動していると、このような感覚は完全に麻痺し、特定の技法の習得とそれに基づいた巧拙が評価の基準となってしまう。私はこの問いかけに対し、日本のおける「職人」の概念を引き合いに出して、師匠の技を継承しやがて熟練して師匠と並んだ際に、そこから一歩二歩、自分独自のものを出せるのが最終的な到達地点である、というようなことを拙い中国語で説明したが、果たして説得力のあるものであっただろうか。

 

 

 

 全体を通しては、非常に楽しく、過ごしやすく、実りあることばかりで、ますます台湾が好きになってしまいました。伯豐は、6月に台湾人の篆刻グループ展に参加させて頂く予定で、来年3月には更なる公的な交流展へ参加するの可能性があります。楽しみです。

 

2016年ダイジェスト

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2016年に行った主な活動、イベントを記録したいと思います。

 

1月

・書学ゼミ創立15年記念書作展(@東京芸術劇場)「平成乙未治石」(印屏)出品

 

・『中国美学範疇研究論集』第四集(大東文化大学人文科学研究所 東アジアの美学研究班、2016年)に「黄惇著『中国古代印論史』 第二章 明代の印論 第五節 万暦時代における影響力のある印章美学観 (1)~(2) 訳注」を投稿

 

・「五葉展」参観(@神戸)

 

2月

・仙台旅行(中塚仁先生宅訪問)

・全日本篆刻連盟主催 東西篆刻交流会 参加(@箱根)

 

・金沢旅行、金沢21世紀美術館「生誕百年記念 井上有一」展参観

 

 

3月

・第一回慈宗青年文化節に参加(@香港)、作品「帰依三宝賛」を出品、展覧会終了後慈氏文教基金に収蔵される。

 

・『公益財団法人 日本習字教育財団 学術研究助成成果論文集vol.2』に「明末清初期の篆刻における理論と実作の相関 -印論を中心として-」が掲載される

 

・U-PARL主催「つながる・史料と研究」東洋学・中国学若手研究者のための合宿ワークショップに参加( @東京大学運動会山中寮内藤セミナーハウス)、「通湖山摩崖刻石の基礎研究」発表。

 

・余正、黃嘗銘先生講演会 参加(@大東文化大学板橋キャンパス)

・謙慎書道会「逍遙游」出品

 

4月

・アンスティチェ・フランセ東京 篆刻講座担当(全2回)

・文京区書道連盟展「逍遙游」作品出品

 

5月

・尚友書道会 平成28年度 群馬合宿(@水沼温泉、遊房)

 

・熊本地震救援!できることをやってみよう!展 雅印10顆出品(@国枝ビル)

 

・台北旅行

・全日本篆刻連盟展「蟹匡」出品

 

 

 

6月

・東アジアの美学研究班 「中国の印論における書論受容の特性」研究発表(@大東文化大学板橋キャンパス)

・日本の書展「若不繋舟」出品

 

7月

・書論研究会関東部会 「中国の印論における書論受容の特性」発表(@東京表参道)

 

8月

・書論研究会大会「中国の印論における書論受容の特性 –伝神論・筆意論を中心として−」発表 (@大阪なんば)

・河内ゼミ合宿参加(@越後湯沢)

・上海旅行

・群馬篆刻協会展 参観(@高崎)

 

・読売書法展「痛飲讀離騒」出品

 

 

9月

・第2回尚友書道会展 開催(@ギャラリーシビック)

 

 

10月

・西泠印社 四君子展 六六轡会展 開幕式・祝賀会参加

 

・文京区書道展 作品出品 門人3名受賞

・文京アカデミー主催市民講座「篆刻入門」 (全5回)担当

・師匠 菅原石廬七回忌法要 出席

 

11月

・「真言宗長者」篆刻

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・京大人文研・智積院 訪問 小峰猊下に謁見

 

・生誕百年記念「小林斗盦 篆刻の軌跡」会場当番

・人形町松浪に店内に作品「踏天一磨」が設置される

 

 

 

 

12月

・2016 年中国留学経験者の集い 出席(@駐日中国大使館)

・台湾 河野隆先生個展・祝賀会・交流会 参加

 

・『書論』に論文「中国印論の伝神論・筆意論の形成における書論の受容」投稿

 

 

川内佑毅(Kawauchi Yuki)研究著録一覧

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《論考》
●「中国印論研究序説」(『書道学論集11』、大東文化大学大学院書道学専攻院生会、2014年)
 ※JAIRO(国立情報学研究所)HPにて公開中 
 http://jairo.nii.ac.jp/0342/00004582/en

●「通湖山摩崖刻石の分析― 銘文の隷定及び字体・書風考察を中心として ―」(『書法漢學研究』16号、書法漢學研究会、2015年)

●「明末期の印論における審美思想の形成」(『書学書道史研究25』、書学書道史学会、2015年)
 ※J-STAGE(科学技術振興機構)HPにて公開中 
 https://www.jstage.jst.go.jp/…/25/2015_15/_article/-char/ja/

●「明末清初期の篆刻における理論と実作の相関 ー印論を中心としてー」(『公益財団法人日本習字教育財団学術研究助成成果論文集Vol.2』、日本習字教育財団、2016年)
 ※公益財団法人日本習字教育財団HPにて公開中、P.55〜 
 http://www.nihon-shuji.or.jp/abo…/pdf/2016ns_athesis_2_2.pdf

《訳注》
●「黄惇著『中国古代印論史』 第二章 明代の印論 第五節 万暦時代における影響力のある印章美学観 (1)~(2) 訳注」(『中国美学範疇研究論集』第四集、大東文化大学人文科学研究所 東アジアの美学研究班、2016年)

《実践研究》
●「日本の篆刻指導方法の問題と改善案の提示」(『東アジア書教育論集』創刊号、東京学芸大学書道教育研究会、2011年)

《寄稿》
・「河井荃廬「背臨虢盤銘」について」(「書道界」2012年10月号、藤樹社)
・「西泠印社について〜基礎的な事実確認〜」(「書道界」2013年12月号)
・「西泠印社について〜選手権の実態および日本人の印社社員〜」(「書道界」2014年1月号)
・「福建印癖旅行記① 寿山石材市場の実相」(「書道界」2014年11月号)
・「福建印癖旅行記② 石材工房街「樟林」の実態」(「書道界」2014年12月号)
・「福建印癖旅行記③ 連史紙の郷〜連城県姑田鎮〜」(「書道界」2015年1月号)
・「杭州で発見!! 河井荃廬印譜『日本何井僊郎印譜』」(「書道界」2015年7月号)
 ※上記は丁亥印社リレー投稿の一部です。
 丁亥印社リレー投稿一覧 http://www.shodoukai.com/mokuroku/teigai

西泠八家印跋選

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●陳豫鐘「趙輯寧印」「素門」(連珠印)乾隆56年(1791)、30歳



書法以險絕為上乘,制印亦然,要必既得平正者,方可趨之,蓋以正平守法,險絕取勢,法既熟,自然錯綜變化而險絕矣。予近日解得此旨,具眼人當不謬予言也。辛亥二月十有三日秋堂併記。

書法は險絕を以て上乘を為し,印を制するも亦た然り。要するに必ず既に平正を得たる者は,方に之に趨くべし。蓋し平正を以て法を守り,險絕もて勢を取らば,法既ち熟し,自ずから能く錯綜變化して險絕ならん。予近日此の旨を解得す。眼を具うる人は當に予の言を謬りとせざるべきなり。辛亥二月十有三日、秋堂併せて記す。


●陳豫鐘「希濂之印」乾隆五九年(1794)、33歳



製印署款昉于文何,然如書丹勒碑。然至丁硯林先生,則不書而刻,結體古茂。聞其法,斜握其刀,使石旋轉,以就鋒之所向。余少乏師承,用書字法意造一二字,久之腕漸熟、雖多亦穩妥。索篆者必兼索之,為能別開一徑。銕生詞丈尤亟稱之。今瀫水大兄極嗜余款,索作跋語于上,因自述用刀之異,非敢與丁先生較優劣也。甲寅長夏,秋堂並記。

印を製り款を署すは文何に昉む。然るに書丹して碑に勒するが如し。然るに丁硯林先生に至りて,則ち書さずして刻し,結體は古茂たり。其の法を聞くに,其の刀を斜握し,石をして旋轉せしめ,以て鋒の向かう所に就く。余少くして師承に乏しく,書字の法を用いて一二字を意造し,之を久くして腕漸く熟し、多きと雖も亦た穩妥なり。篆を索むる者は必ず兼ねて之を索め,為に能く別に一徑を開く。銕生詞丈尤も亟しば之を稱す。今瀫水大兄極めて余の款を嗜み,上に跋語を作すを索め、因りて自ら用刀の異を述ぶ。敢えて丁先生と優劣を較ぶるに非ざるなり。甲寅長夏,秋堂併せて記す。


●陳豫鐘「最愛熱腸人」嘉慶八年(1803)、42歳



余少時,侍先祖半村公側。見作書及篆刻,心竊好之。並審其執筆運刀之法。課余之暇,惟以二者為事,他無所專也。十八,九漸為人所知。至弱冠後,遂多酬應,而於鐵筆之事尤夥。時有以郁丈陛宣所集丁硯林先生印譜見擬(※)者,始悟運腕配藕之旨趣。又縱觀諸家所集漢人印,細玩鑄、鑿、刻三等遺法,向之文何舊習,至此蓋一變矣。後,又得交黃司馬小松,因以所作就正,曾蒙許可。而余款字則為首肯者再。蓋余作款字,都無師承,全以腕為主。十年之後,纔能累千百字為之而不以為苦。或以為似丁居士,或以為似蔣山堂,余皆不以為然。今,余祉兄索作此印,並慕余款字,多多益善。因述其致力之處,附於篆石,以應雅意。何如。嘉慶癸亥十一月廿三日坐求是齋漫記。秋堂陳豫鐘。 

※丁仁編『西泠八家印選』作「投」字。

余少き時、先祖半村公の側に侍し、書及び篆刻を作るを見、心竊かに之を好み、並せて其の執筆運刀の法を審かにす。課餘の暇あらば,惟だ二者を以て事と為し,他に專らにする所無きなり。十八,九漸く人の知る所と為る。弱冠に至る後,遂に酬應多く,而るに鐵筆の事に於いて尤も夥し。時に郁丈陛宣の集むる所の丁硯林先生印譜を以て擬せらるる者有り,始めて運腕配藕の旨趣を悟る。又た諸家集むる所の漢人印を縱觀し,細さに鑄、鑿、刻三等の遺法を玩す。之に向いて文何の舊習は此に至りて蓋し一變す。後,又た交黃司馬小松と交わり,因りて作す所を以て正に就き、曾て許可を蒙る。而るに余の款字は則ち首肯を為す者の再なり。蓋し余の款字を作すは都な師承無く,全く腕を以て主と為す。十年の後,纔かに能く千百字を累ねて之を為すも以て苦と為さず。或いは以て丁居士に似たると為し,或いは以て蔣山堂に似たると為すも,余皆な然りと以為わず。今、餘祉兄此の印を作るを索め,並びに余の款字を慕う。多多益ます善し。因りて其の致力の處を述べ、篆石に附して,以て雅意に應ず。何如ぞ。嘉慶癸亥十一月廿三日求是齋に坐して漫ろに記す。秋堂陳豫鐘。

●奚岡「壽君」乾隆43年(1778)、35歳

仿漢印、當以嚴整中出其譎宕、以純朴處追其茂古、方稱合作。戊戌冬,為寶之三兄雅鑒,鐵生記。

漢印に仿うは、當に嚴整中を以て其の譎宕を出し、純朴處を以て其の茂古を追わば、方に合作と稱すべし。戊戌冬,寶之三兄雅鑒の為にす。鐵生記。

 

 

 GW期間中、「熊本地震支援!出来ることをやってみよう!展」にご来場頂いた皆様、改めてありがとうございました。

 

 寂しくならないようにと余裕をもって刻印9・扇子1の作品を出しました所、お陰様で完売を以て展覧会を終えることと相成りました。

 

 

 

 これまで、あまり雅印を販売したことがなかったので、見通しがさっぱりつかず、買われやすいように価格も低めに出しました。報告を受け驚きましたが、同時に嬉しく思いました。

 

 我々の思い、購入頂いた皆さんの思いは、寄付金となって被災地で活用されることでしょう。改めまして、ありがとうございましたm(_ _)mまた発起人の國枝さんを始め、運営に携わった皆様、大変お疲れ様でした。

 

 

 篆刻作品を頒布することは篆刻文化の社会への啓蒙にも繋がるでしょう。今後は、依頼印だけでなく雅印の頒布する窓口を作ることも考えていきたいと思います。