☆*:.。. 注!腐的妄想です .。.:*☆





電車が到着するたびに沢山の人が改札から吐き出されてくる。

土曜日の午後とあって
智と決めた待ち合わせ場所は 右も左も人待ち顔だ。

周りの人が改札から出てくる人を見つめては
待ち人を見つけると片手を上げて
お互いに引き寄せられるように近づいて
人混みに消えていく。

待ち人を見つけた時の嬉しそうな顔に
俺まで幸せな気持ちになれるのは
俺も智と待ち合わせをしているせいだからなのだろうか…?

西に傾きかけた夕日が黄金色に輝いて
街中がトキメイテ見える。

隣に立っていた女の子が居なくなったと思ったら
俺と同い年くらいの男がスマホを片手にやって来て立ち止まった。

智が来るまでは まだあと30分…

5分ほどして隣の男に向かって駆け寄ってきた女の子が

「ごめん…待った?」

「いや…俺もちょっと前に来たトコ」

「電車一本乗り遅れちゃって焦っちゃった」

「そっか…でもまだ5分前だぜ?」

「先に来て待ってたかったのに…」

甘い会話が聞こえてきて こっちまでこそばゆくなる。

男が彼女の頭をポンポンってした手を彼女の腰に回して

「映画始まる前に何か飲もうぜ」

「うん!走ったら喉渇いちゃった」


二人の後ろ姿を見送りながら
あの二人も映画を見に行くんだ…
俺だって智と…

そうさ…智と…

智…
智…
智…

今日は まず最初に「智」って呼ぼう。
二人っきりで出掛けるんだから「智」って呼んでもいいよな?
もしまた驚かれたとしたって もう気にしない。

智…
智…
智…

ちゃんと自然に呼べるかな…

あぁ…ヤベェ…
ドキドキしてきた。


ドキドキを紛らわすように時計を見る。


まだあと20分か…


あ~心臓に悪い…

ふぅ〜…と息を吐いて顔を上げると

ぁ…智……?

黒いキャップを被った男が改札を抜けるところだった。
そしてキョロキョロと辺りを伺って
俺と目が合うと ふにゃ~と笑って小さく手を振った。