「あのさ…」

「ん?」

「今日って…松本さんと…一緒だった?」

「え?…あぁ…うん。そうだけど?」

「そっか…」

智くんに松本さんとの事を
聞いてみたいけど…


「それを君に言う必要はなくない?」


松本さんの言葉が俺にブレーキをかける。

何でこんなにモヤモヤするんだろう…

松本さんだけじゃなくて
こんなにカッコいい智くんなんだから
いつか、そう遠くないうちに
彼女が出来るかもしれない…

そうしたら彼女と一緒に暮らすために
ここを出て行く日だって…

そんな分かりきった事なのに
何でこんなに…


「櫻井くんも…好きなんでしょ?大野くんの事」


松本さんの言葉が俺の心臓をギュッと捻り上げると
心臓がバクバクと音を立て始めて
息が苦しくなった。


智くんを…好き?

そりゃぁ好きに決まっている。

好きに決まってるけど…

でもそれって…

俺の好きは…
松本さんと同じ…なのかな…?

それって…俺が智くんに恋をしてる…って事?

恋?

恋って言えば…

顔を見ただけでドキドキしたり
一分一秒でも逢いたくて
逢えない時間は切なくて
相手の言葉や仕草に一喜一憂して
ただ横顔を見ているだけで幸せで…


それって……

智くんの顔を上目遣いでチラッと見ると
智くんと目が合って…
ドキッとしてギューっとなった。

慌てて目をそらす。

こ、これって………?

口の中が乾いて肉まんが上手く飲み込めない。

アタフタと立ち上がって蛇口を捻って
コップに水を注ぐと一気に飲み干した。

智くんに背を向けながら口元を手の甲で拭う。