「じゃぁ4号店は紅葉にする?
俺はピンク色の桜のイメージも捨てきれないんだけど…」

「そうなんですけど それだと2号店の
菜の花と被るかな…って思って。
2号店の華やかな黄色から
3号店の爽やかな緑…
柔らかいイメージが続いたので
だから敢えて次は鮮やかな赤で」

「なるほどね。
うん!じゃぁそうしよう!」

松本さんの事務所の会議室で
4号店のイメージが決まったところで
ふぅ…とため息をついてテーブルに広げた
ラフスケッチを集めてファイルにしまった。

「おっ!丁度いい時間じゃん。
メシ行こう!駅のすぐそばだからさ」

松本さんに連れられて訪れた店は.
品のいい和風の佇まいで
敷居をまたぐと和服姿の女将さんが
出迎えてくれた。

程よく温められた小さな部屋で
松本さんと向かい合う。

女将さんが冷えたビールを注いでくれて

「ではごゆっくりどうぞ…」

床に膝をついて両手で襖を閉めると二人っきりになった。


「じゃぁ4号店も頼んだよ」

二人でカチンとグラスを合わせた。

刺身をつまみながら日本酒に移る頃

「今日…櫻井くんに会ったよ」

「え…?」

驚いて顔を上げると
ちょっと複雑な表情で笑いながら

「1号店の前でね。バッタリ…」

「翔くんが?」

「今日、俺と打ち合わせって言った?
彼、心配だったんじゃないの?」

そう言うと思い出し笑いを噛み殺した。