「別々に暮らすの?」と聞かれて
頭の中でパンッと水風船が弾けた。

「な、何でですか?
そんなつもりはありませんけど…」

慌ててる俺とは裏腹に落ち着き払った松本さんが

「だって就職したら必要ないでしょ?
今は親からの仕送りなしで
頑張ってる苦学生だから…って
大野くんが言ってたけど
就職したら…まぁ最初のうちは
給料も安いだろうけど今よりはマシな生活になる。

大野くんだって、この先も俺と組んで
コンスタントに仕事をしていれば
家賃を払えないほど金に困ることはない…」


まぁ確かに松本さんが言っている意味は分かる。

智くんの仕事が順調で
俺が就職して普通に月給を貰えるようになれば
それぞれで家賃を払うことが出来るんだから
なにもそう広くも無いアパートに
二人で暮らしている必要なんて無いんだ。

必要なんて無いんだけど…

そんな事、考えた事も無かった…

「アパートの更新は普通は二年だよね?
丁度いいんじゃない?」

「丁度いいって…」

「ん?引っ越しするのにさ」

「引っ越しって…
そんな事…決めてないですから」

「まぁ櫻井くんは決めてないかもしれないけど
大野くんの意向もあるからね」

智くんの意向…?
智くんはお互いに経済的に
独立できるようになったら
引っ越すつもりなのかな…

あのアパートを…


出て行く…つもりなのかな?