グッと腹に力を入れると顔をあげて

「校長先生…しょ…いえ、櫻井先生が
教師を続ける事に支障はありますか?
この事で教師を辞めなきゃいけない…
なんて事にはなりませんよね?

俺のために東京での生活を捨てて島に来てくれたんです。
島で教師になって…
大好きな子供達と一緒に過ごして
それが将来の夢になったって…
目指すものが見つかったって…
だから…教師を辞めなきゃいけないなんて事になったら…
校長先生お願いします!
翔を辞めさせないで下さい!」

喋る事は苦手だ…
いつもは思った事の1/10も言えない俺だけど
翔のためにできる事…
俺達のために…
精一杯の思いを吐き出すと腰を90度に折って頭を下げた。

「智…」

翔が俺の背中に手を添えた。


呆気にとられて言葉を失ったままの校長が
頭を下げ続けている俺を見てハッと我に返って

「お、大野先生!顔をあげてください…」

慌てて俺の肩に手を掛けて身体を起こすように促すと
ポケットからハンカチを取り出して額に浮かんだ汗を拭いた。

「…なるほど…いや…ビックリしてしまって…
…でも…あぁ…そういう事でしたか…」

混乱している思考を整理するかの様に独り言を呟くと
立ち尽くしてる俺たちに気づいて

「と、取り敢えず座りましょうか…」

校長と向かい合ってソファーに座る。

俺達の言いたい事は言った。
あとは最期の審判を待つのみ…か…