ガタンっ

「イテっ!」

ビックリした高木が飛び上がる。

夜中に会議室のテーブルで高木と向かい合って
ブックカバーを梱包する。

一日中フル稼働の高木が疲れてウトウトした所を
テーブルの下で足を蹴とばした。

「寝てんじゃねーよ!」

「す、すみません」

「まぁいいや…ちょっと休憩するか…
コーヒーでも買って来いよ」

高木に小銭を渡すと大きく伸びをした。

3時半か…この調子なら 後1時間くらいで終わるかな…
4時半を過ぎれば始発も動き出す。
ま、丁度いいか…

「櫻井さん、あと1時間くらいで終わりますかね?」

高木がコーヒーの紙カップを俺に差し出しながら
俺の予想と同じ事を言う。

「まぁそんなとこだろ…アチチ…」

熱いコーヒーに眠気が覚めてゆく

「終わって安心して寝過ごすなよ?
何時に届けんだ?」

「10時くらいが丁度いいかなって思ってるんですけど…」

「そっか…」

「本当にありがとうございました」

高木が神妙な顔で頭を下げる。

見かけはチャラそうだけど本当は真面目で繊細なヤツなんだ。
だから今回の事は…いつかきっとコイツの糧になる。

「お前…城島さんがいつも言ってないか?
発注したら必ず確認しろって」

「…言ってます」

「こう言うことが…無いとは言い切れないんだよ。
絶対は無い。だから丁寧な仕事をしろって事だ。
それと…もう一つ…」