凄い勢いで喋る櫻井さんに圧倒されていると

「やっぱ…引きますか?
男性アイドルのコンサートに男一人で…って…」

心配そうな小さな声。

「…引きませんよ…」

だって俺…

「だって俺は…来週…リーダーの個展に行くんですから…」

一瞬の沈黙の後

「えぇーーーっ!!!」

ビックリしてる櫻井さんに…
ヤバい…顔がニヤける。

「な、な、なんで?凄い!チケット取れたんですか?」

「俺のネェちゃ…姉が大ファンで 運良くチケットが
取れたんですけど…今、悪阻がひどくて行けないからって…
俺が絵が好きなんで… 行ってくれば?って…」


「す、凄いですね。
俺、東京はネットも電話も繋がらなくて…
大阪は最初から諦めてました」

溜息交じりの櫻井さんの声。


どうしよう……

チケットは二枚ある。
ネェちゃんがダンナと行くつもりだったから。

誘って…みる?


でもなぁ…毎日喋ってるとは言え初対面じゃん?
いきなり大阪に行かないかって言われたら…
困る…かな?

でも…

なんだろ…

俺の中から消えない あの人…

だから櫻井さんに会ってみたい気持ちはあっても
どこか躊躇っていたんだ。


でもきっと後悔する…今 会わないと…

そんな気がして胸がざわつくんだ。