「良かった…
翔ちゃんに別れようなんて言ってさ…
これで翔ちゃんがそんなに好きでもない人と
結婚したなんて聞いたら…
私、一生後悔したと思う。
それなら私と…って。

でも…翔ちゃんが物凄く好きな人と恋に落ちたんだったら…
諦められる。
負けたー!って次に進める気がするよ」

彼女がサッパリした顔で笑った。

笑顔で敗北宣言をする彼女…
負けたのは俺だよ…
って言うか最初から敵わなかったよ。
ホント俺には勿体無い…

「わざわざ会いにきてくれてありがとう。
翔ちゃんを好きになって…
好きになった人が翔ちゃんで良かった」

「俺も…ありがとう…」

そう言うのが精一杯だった…

「次は私と一瞬一秒でも離れたくない…って人と恋愛するから!」

「そりゃスゲーな…」

「でも…実際は鬱陶しいよね…そーゆーの」

ペロッと舌を出しておどけた彼女と、最後は笑いあって
ホテルのロビーで手を振って別れた。

結局俺は、自分から何も言え出せないまま
彼女の優しさに甘える形で終わらせた。

ケジメをつけるなんてカッコつけといて…

情けないな…俺。



でも…これで正面から智と向き合って始められる。

智…もっと会えたらいいのに…

でも…やっぱり智には島が似合う。
俺がわがままを言って智を東京に連れてきたとして
智の笑顔がくすんでいくくらいなら…

せめて月に二回…
その休日を確保するために
今日もがむしゃらに仕事をこなす。

やっと金曜日…
智に会える…

今日は船の時間ギリギリまで仕事をしようと
荷物持って出勤したけど、定時を過ぎたら気が急いて
一気に集中力が低下した。