一抹の寂しさを抱えて降り立った前回とは違い
今回は智に会える喜びで、あの頃のように
デッキで足踏みをした。
今の時間はまだ漁港にいるはず…
桟橋に降り立つと今回は一番最初に智の居る漁港に向かう。
桟橋を半分くらい歩いた所で、走ってくる智が見えて
大きく手を振った。
「あ~…間に合わなかった~…」
肩で息をしながら智があの頃のままの笑顔で言った。
「港に行こうと思ってたから、慌てて来ること無かったのに…」
一分一秒でも早く会いたいと思ってたくせに…
素直じゃない俺が言う。
「だって…早く会いたかったし…
いつもの場所で、翔のこと待ってたかったのに…」
笑顔を見せながらもちょっと悔しそうな顔をする。
智は…ちっとも変わってない…
あの頃も俺が船から降り立つと仔犬のように喜んで
俺にまとわりついた。
智の方が歳上なのに…
そんな智が可愛くて…嬉しくて仕方なかったんだ。
「とりあえず俺ン家に荷物置きに行こう!」
俺のバッグに手をかける智に
「あ…ちょっと待って。
先に港に行きたいんだ。
防波堤からの写真を撮らなきゃ。
写メを送る約束してんだ。
この前忘れちゃったからさ…
先に撮っとく。」
防波堤の先でカケルと約束をした写真を撮る。
俺と智の海…
今度、秋になったらまた写真を撮ってカケルに見せよう。
春、夏、冬の海…
カケルが描く秋の海を見てみたい。