「コーヒー飲む?」

酔っ払ったショウくんが突然やってきて、突然寝落ちした翌朝。
二日酔いの寝起きのまま、昨日と同じ様に床に座って
まだボンヤリしているショウ君に、右手で持ってるマグカップを渡すと
隣に座って膝を抱える。

両手で包み込む様にカップを持ちながら
黒い液体をジッと見つめてるショウくん。

なんかあった?

「ショウくんさ、昨夜俺に聞きたい事があるとか
お願いがあるとか言ってたけど…なに?」

俺、そんな事言った?みたいな顔をしてビックリ目玉で俺を見る。

少しの沈黙の後、マグカップをテーブルに置き

「俺さ……」

ショウくんが大きく息を吸って…
吐いて…
吸って…

何か言おうとして…

また吐いて…


なに?

俯いてるショウくんの顔を覗き込むと 意を決した様に
俺の目を見て…
そらす…

…そして俯いたまま小さな声で

「俺さ…サトシくんの一番になりたいんだ……」

肩を丸めて、独り言みたいに呟く。

うん?

「俺ね、俺の知らないサトシくんを知ってる人が
居るのが嫌なんだ…
サトシくんの一番になりたいんだ!
仕事でも…これからの人生でも。」

喋りだしたら堰を切ったように必死の形相で俺に訴えてくる。

「お、俺…俺ね………サ、サトシくんの事が好きなんだ!」

ショウくんの突然の告白にビックリして心臓が跳ねる。
ショウくんにしては 随分思い切った告白だな…

でもね



「…知ってるよ」

えっ?って顔で、ビックリ目玉を更に大きくして俺を見る。

「だって…昔 聞いたから…」

京都に行った俺を追いかけてきて
泣きながら俺の事、好きだって言ったじゃん。

「大野君の一番になりたいんだ!」

嬉しかった。

でもね、あの時のショウくんは俺に憧れてただけ…
憧れと恋は似てるけど……同じじゃない。

10年後に肩を並べて立っていたら その時にもう一回言って…
俺もショウくんに負けない様に頑張るから、ショウくんも負けないで。
ショウくんが俺以外の一番を見つけるまでは、ショウくんが俺の一番だから。

そう言って突き放した。

京都の夜……
ショウくんを抱きしめたかった。

俺も好きだよって……
言いたかった。