テレビはコロナ騒動報道で席巻されています。はじめてのウイルスなので有効な薬がないことも影響していますが、なかなか終息しません。症状を観察し、ひょっとしたらこの薬が効くのではないかと既存薬の中から選んで試した薬が効いたという報告があちこちで聞かれます。米国では、マラリアや関節炎などの薬が治療に使えるかを調査し、中国では富士フィルムの子会社が作っているインフルエンザ治療薬のアビガンがコロナにも効くとして治療薬として承認、富士フィルムの株価がストップ高になりました!いずれも、新薬開発は間に合わないと判断したということです。

何とかしなければならない医師たちの知見に基づく懸命な試行錯誤的対処療法の結果ですが、機序が明確ではなく、普遍性もないので、やはり正攻法のコロナウイルスの特性に合わせた特効薬の開発が待たれます。


その新薬ですが、薬として承認されるためには治験の承認手順を踏んだ地道な作業が必要です。急いでいるので省いて良いということにはなりません。下図は、治験協力者が治験プロセスから逸脱しないよう、治験コーディネータが当該患者をフォローするプロセスを描いたものです。

大変な手間ときめ細かなフォローが必要なことが理解できると思います。実は、この前に治験に協力してくれる患者を捜さなければなりません。しかも誰でも良いというわけではありません。新薬開発のターゲットとなった疾患の薬効を確かめるために適した病歴、薬歴、手術歴、既往症、性別、年齢などを勘案して選ばなければなりません。効果があれば膨大な利益をもたらす新薬の開発には、各国のメーカがしのぎを削っていますが、副作用を上回る効能が一定の確率を以て証明されるまでには、相当な時間と手間がかかり、手順を踏まないとできないというのがシステムに乗せるために治験業務を調べてきた経験から言えることです。

早い話が、新薬は短期間では出来上がらないということです。パンデミック宣言が発せられたコロナの場合、緊急事態なので薬として承認されるための手順を踏まずに拙速でも良いから、早期製品化を目指すという政治判断をするか?それができるのならかまいませんが、そのような危険な状態の薬を承認していいはずがありません。以前、電子カルテを含む医療機関の統合情報システム開発プロジェクトを指揮していた際には、治験コーディネータ担当者と治験業務をシステムに載せるための仕様を検討したことがあります。この際、年齢、病歴、薬歴、手術歴など、薬としての効果を確認するために、外乱が入らないようにスクリーニング作業を行いますが、この作業を支援することも含まれます。

人命に関わり、QOLに関わる新薬の開発は、この様に厳密に管理された環境下で行われることの一端が理解できたと思います。直情径行気味なトランプ大統領が、コロナウイルス治療の開発を加速させるために食品医薬品局(FDA)に形式的で非効率的な手続きを減らすように指示すると表明したようですが、拙速で投与して二次被害が出るリスクを説明し、形式的ではなく必要な手順であることを理解してもらう必要があります。
 

○参考⇒コロナ治療薬、ワクチンの拙速開発は危険
 

 

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