黒犬伝 16 (前編) | 八光流 道場記

八光流 道場記

京都で約30年、師範をやっております。
つれづれなるままに書き綴ってまいります。

黒い北海道犬アクは12歳になっていた。


性格は、若い頃に比べれば少し温厚になっていたが闘えば必ず勝つ身体能力は保っていた。



アクとおれには、ゴローと言う共通の親友がいた。


ゴローは、アクより2歳年上のドイツシェパードで海苔屋の社長が飼っていた。


アクは、体重40kg以上ある2歳年上のドイツシェパードに全く臆する事無くじゃれついて直ぐに仲良くなった。


アクが成犬になってからもゴローとアクは仲が良かった。


優秀な警察犬の血統で利口で強くて優しいゴローと「熊殺し」と呼ばれた猟犬の子孫で野生の本能剥き出しの協調性が無く警戒心の強いアクとは不思議に気が合っていた。


ゴローは、亀岡在住だったので月2回位亀岡の山中でこの2匹を遊ばせていた。



ところが、ある日おれの母とゴローの飼い主である海苔屋の社長が、大喧嘩になり それが元でゴローとおれ達は会えなくなってしまった。


海苔屋の社長が、おれやアクとゴローを会わせないと言って来た。


おれは、母に喧嘩の原因を聞いたが母は海苔屋の社長が絶対に赦せ無い正義に悖る言動があったとしか言ってくれ無かった。


おれは、仕方無く両者の怒りが冷めるまで様子を見る事にした。



後編に続く