お父さんやお母さんは、自分よりも辛い思いはしてないはずだ!

と、受験勉強が煮詰まったお子さんは思ったりします。

そこで、親御さんも煮詰まったりしたら、

産んでくれなんて頼んでない!

などという発言が、見られることがあります、

よね?

そんなお子さんがおいでなら、

どうぞ私のところにお連れ下さい。


あのね。

あなたがお母さんの体の中にいるときには、

あなたのお母さんは、

ずっと大変な思いをしたんだよ。

あなたは、つらいことがあったら、

とりあえずそれをおいておくということを、

選ぶことが許されてるでしょ?

明日、やればいいやって。

でもね、君のおなかの中で育っていく、

君のための準備をすることは、

お母さんは逃げることが出来ないことだったんだよ。

そして、理科の時間にも保健の時間にも習ったろうけど、

あなたの体はお母さんの体の前側にいたんだね。

おなかに物を抱えるのって、

肩から荷物を提げるのよりも、

背中にしょうのよりも、

すごく支えがなくて辛いこと。

それをお母さんは、

休みなく、支え続けて、

君がここへやってくるその日を待った。

お父さんは、そんなお母さんの、

形のない気持ちを支えるために、

ものすごくがんばったんだよ。

形のないものを支えるのって本当に大変なんだ。

君だって、合格という形のないものを信じてがんばるという、

辛い思いをしているからわかるでしょう?

お父さんもお母さんも、がんばって、君を迎えた。

そして君が生まれる日が、

一番、逃げられない辛さとの戦いだったはずだよ。

それは君の受験の日の恐怖なんて比べ物にならない。

怖いだけじゃない、痛いんだよ。

君が生まれるその瞬間まで、ずっとずっと痛いんだ。

どんなに痛いからって、その痛み自体から逃げることが出来ない、

そんな恐怖はたぶん君は味わったことがないはずだ。

そしてそれは、君の受験が決着するまでと同じくらいの時間、

続いているんだよ。

本当に逃げられないという思いを、君のお父さんもお母さんも知っている。

そして君がやってきた。

あのときの思いが少し薄れているから、

時々けんかになっちゃうんだよ。

でもね、君がこの世にやってきたとき、

君もお父さんとお母さんと共同作業をしているんだ。

うまくタイミングを合わせられないと、

君もお母さんも死んでしまうんだよ。

それくらい大変な苦しみとか痛さとか、

君も同じくらいの長さで経験してるんだよ。

それを忘れちゃってるから、

時々けんかしちゃうんだな。

でも大丈夫。

いま、思い出すことが出来なくても、

君の心の中で想像することが出来たはずだよ。

だって、君は生きている。

生きている限り、どんな環境におかれたって、

人はかわり続けることが出来るんだよ。

その軌跡を私はずっと見てきている。

だからその仕事を続けている。

それを人は奇跡と呼ぶこともあるけれど、

違うよ。

人の可能性ってほんとにほんとにすごいんだ。

でも悪いほうにぐんとまがってしまうこともある。

そうならないために、多分、

勉強ってものはあると思う。

賢くなれば、

巻き込まれないですむ悪いものって、

実は結構あるんだよ。

そして君が賢い大人になったら、

お父さんとお母さんと同じ距離をとって立って、

しっかり支えられる人間になれるんだ。

私はその踏み台になろう。

それが、

私の仕事だから。