パリ五輪開催 | 俳句の里だより2

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五輪の歴史と意義

 

今日は8月2日、今年も残り5ヶ月となった。今年は元旦に能登半島地震が発生し、7月末までの犠牲者は災害関連死を含めると339人に上るという。また多くの建物が損壊し、未だに撤去すらほとんど捗らず、復旧や復興もままならない状況だ。そんな暗い2024年(令和6年)の幕開けだったが、厳しい冬が過ぎると今度は厳しい夏がやってきた。日本列島は35℃を超える猛暑に見舞われ、熱中症により犠牲者の数も増えている。また、昨年初めに落ち着いた新型コロナウィルスも今年になって再び増加傾向にあるという。今年の夏も熱中症とコロナ感染に脅かされる日々がしばらく続きそうであり、我々高齢者にとっては無事に今年の夏を乗り切ることが出来るかどうか、怯えながら過ごすことになりそうだ。

 

ところで、先月の下旬からフランスのパリでオリンピック(パリ五輪)が開催されており、数々の種目で日本選手の活躍がテレビや新聞で報じられている。ただ、フランスと日本では時差が7時間あるため、ライブ中継(生放送)を見るとなると、夕方から深夜になってしまう。それでも、日本選手の活躍を出来る限り生放送で応援したいので、眠いのを我慢して深夜の生放送に釘付けの毎日だ。五輪となると、やはりメダル獲得、それもメダルの色(金・銀・銅)とその獲得数の話になってしまうが、五輪は何もメダルの獲得だけが目的ではなく、オリンピック憲章には「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、 人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てること」とあり、本来の使命は五輪に参加して「平和な社会」「人類の調和」に寄与することである。

 

よく知られているように、五輪(近代オリンピック)はフランスのクーベルタン男爵の提唱により、1896年にギリシャのアテネで第1回大会が開催された。この時の参加国は欧米先進国の14ヶ国(日本は不参加;初参加は1912年の第5回大会(スウェーデンのストックホルム大会から)であり、選手は男子のみ(女子の参加は1900年の第2回パリ大会から)で241人だった。また、実施された競技は、陸上(マラソンを含む)、水泳、ボート、体操(ウエイトリフティングを含む)、レスリング、フェンシング、射撃、自転車、テニスの9競技(ただしボートは悪天候のため中止)だった。また、3位以内の入賞者へのメダル授与は第2回パリ大会からであるが、陸上競技だけであり(メダル製作が間に合わず、選手に届いたのは2年後とのこと)、全種目へのメダル授与は1904年の第3回セントルイス大会(アメリカ)だった(16競技87種目に13ヶ国681人の選手が参加)。

 

最初に記したように、今回のパリ五輪もそうだが、近年の五輪では各国のメダル獲得競争が一段と激しくなってきている。特に開催国の場合はその傾向が著しく強く、2021年に新型コロナが流行する中で無観客で開催された前回の東京大会では、日本がいくらメダルを獲得するか、それも金メダルがいくつ獲得できるかに五輪関係者はもちろんのこと、日本国民の多くが関心を持ち、異常なまでに熱狂した。そのため、メダル候補の選手たちは絶対にメダルを獲得しなければとの強いプレッシャーに必死で耐えねばと悩み苦しみ、日頃の実力が発揮できずメダルを逃したことも多くあった。逆にその重圧をうまく利用して実力以上の力を発揮しより色の良いメダルを獲得した選手もいた。最終的に日本は過去最多の金27、銀14、銅17の計58個メダルを獲得した。金メダルの数は米国、中国に次いで世界第3位であり、総メダル数も世界第5位だった。もちろん、この偉業と大成果に日本国民の多くは熱狂した。

 

新型コロナの影響により1年遅れで自国開催された東京五輪から早や3年が経過し、新型コロナも一段落したため、予定通り開催されたパリ五輪では、現時点(8月2日)での日本のメダル獲得数は、金8、銀3、銅5の計16個であり、金メダルは世界第3位タイ(全メダル数では6位タイ)である。これまでの前半戦では、日本のお家芸と言われる体操や柔道の他に、スケートボードやフェンシングでも金を獲得した。さらに、馬術や水泳でもメダルを獲得したが、それ以外ではメダルが期待されていてもプレッシャーが大きい影響もあり、実力が今一つ発揮できないでいる。これからの選手の踏ん張りに期待したい。

 

これら各国のメダル獲得競争がいつから盛んになったかあまりはっきりしないが、100年以上前に話を遡ると、1908年の第4回ロンドン大会から、オリンピックへの参加が各国のオリンピック委員会を通して行われるようになった。それまでは個人やチームで申し込めば参加できたが、第2回パリ、第3回セントルイスと続いた万国博覧会付属の大会から脱却したロンドン大会には、22の国と地域から1999人の選手が参加、23競技110種目が行われた。実は「五輪は参加することに意義がある」との有名な言葉はこのロンドン大会で言われたものである。

 

すなわち、ロンドン大会の陸上競技でアメリカとイギリスの間にいくつかのトラブルが起こり、両国民の感情が収拾できないほど悪化しため、日曜日にセントポール教会で行われたミサで、タルボット主教が各国選手団を前に「オリンピックで重要なことは、勝利することより参加したことである」と説教した。その5日後、イギリス政府が大会役員を招待して開いたレセプションの席上で、クーベルタンIOC会長がこの言葉(オリンピックは勝つことよりも参加することに意義がある)を引用して演説したことにより、後世まで語り継がれるこことなった。

 

ともあれ、五輪でのメダル競争もそれはそれで選手や応援する国民の励みとなるが、それがあまり過剰になると問題が生じることとなる。パリ五輪はまだまだ後半戦が残っており、我々もまた日本選手を冷静に応援し、活躍を祈りたいものだ。しばらくは熱帯夜の暑い夏、眠れない夏が続く。