裏金と闇金 | 俳句の里だより2

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俳句の里に生まれ育った正岡子規と水野広徳を愛する私のひとりごと

やりたい放題

 

昔から問題となっている国会議員(政治家)の「政治とカネ」であるが、相変わらず世間を賑わしている。政治資金規正法などで少しは減少するかと思いきや、全くの「ザル法」であり、好き勝手のやりたい放題、検察などが取り締まろうとしても、それもままならない。というのも、これらの法律は政治家が自らが賛成多数で作ったものであり、自分で自分の首を絞めるような法律を作るはずがなく、「ザル」というか「抜け道」はいくらでもあり、そのために法律違反すれすれのカネ集めやカネの使用を行い、検察も彼らを摘発したり、立件したりすることをためらうのである。

 

ただ、政治家すべてがこの「政治とカネ」問題を起こすかと言えばそうではなく、特に政権を握っている与党、それも自民党の連中が極端に多いのである。権力や権限を握っていれば、企業や団体は彼ら権力者に多額の献金や寄付を行い、自分たちに利益が得られるからであり、権力も権限も無い野党の連中に献金や寄付をしても何の利益も得られないことは誰でも分かることだ。すなわち、両者ともに「ウィン・ウィンの関係」であり、従って贈収賄(汚職)もまた頻繁に起こるのである。もちろん、これもすぐに汚職がバレるようなことはせず、巧妙な手口を駆使して、何とかバレないように検察の眼を誤魔化そうとしており、政治家・企業(団体)と検察との知恵比べが行われている。

 

しかし、これらの「悪事」を隠し通すことはそう簡単なことではなく、何かの拍子についバレることがあるのが面白い。現在は、警察や検察よりも、マスコミ、特に週刊誌(文春砲など)などの調査能力というか、捜査能力が非常に鋭くなっており、むしろ政治家のこれらの「悪事」(スキャンダルも含む)の暴露は、大部分がこの週刊誌の記事によることが多い。そのため、「悪事」を行った自民党議員などは、いつそれが世間にバレるかビクビクしながら過ごしているに違いない。つい最近も、文春砲がさく裂し、また大手新聞にもこの「悪事」が世間に大きく報道された。

 

それは、自民党の5つの派閥が開いた政治資金パーティーの収入が政治資金収支報告書に記載されていなかったため、政治資金規正法に違反する(不記載・虚偽記入)というものであり、また、これは単なる記載ミスではなく、裏金づくりのためではないか、と先の国会で野党はこれを岸田首相や自民党閣僚に厳しく追及したのである。そもそもの発端は、共産党が新聞赤旗に記載したが、それをある大学教授が検察へ告発したのであり、そのため自民党派閥はあわてて相次ぎ訂正した。告発状によると、2018~21年の4年間の不記載が、5派閥合わせて約270件、計約4千万円分見つかった(内訳は、最大派閥の安倍派・清和政策研究会が約1900万円、二階派が約900万円など)。野党の追及に、岸田首相は裏金などではなく単なる記載ミスとのみ繰り返したが、何の説得力も無くますます疑惑は深まった。

 

その後、さらに「悪事」が暴露された。それは、最大派閥の清和政策研究会(安倍派)が巨額の裏金づくりを続けていた疑いが発覚したのである。裏金の総額は2022年までの5年間で1億円以上に上るとみられ、東京地検特捜部が捜査を進めているが、この間事務総長をしていた松野官房長官は、記者団の質問に「この場は政府の立場としてお答えしている。個々の政治団体や私の政治活動については差し控える」とノーコメントを繰り返し、西村経済産業相もまた「個々の政治団体の話なので答えを控えたい」と黙秘、高木国対委員長は国会から雲隠れする始末だ。

 

また、安倍派座長の塩谷元総務会長は「事実関係を精査する」とコメントした後、報道陣の取材を振り切った。この「裏金づくり」とされるパーティー券収入の一部を払い戻すキックバックについて、塩谷氏は派内で行われていたことを一時認めたが、わずか5時間後に報道陣の前に現われ、このキックバック発言を「撤回」した。誰かに撤回するように指示されたのであろうが、それからも巨額の裏金づくりをせっせとしていたことが見え見えである。この多額の裏金づくりは、何も安倍派だけでなく、他の派閥でも行われているのは明らかであり、まさに権力を長期独裁している「驕る自民党」の悪習になっている。

 

「政治とカネ」の問題では、東京都江東区長選を巡り、先に辞任した自民党の柿沢前法務副大臣に対する東京地検特捜部による買収容疑での捜査も進んでいる。今回のパーティー券収入による裏金づくりについても、ある政府関係者は「『裏金』スキームは悪質。年明け以降、捜査が本格化するだろう」と話しており、来年1月に再開される通常国会で野党は厳しく追及しなければならない。さらに、岸田政権の中枢にいる同派歴代幹部が事情を知っている可能性もあり、野党からは「リクルート事件以来の大事件」との声さえ出ているという。

 

以上は「裏金」であるが、もう一つ前回のブログにも紹介した「官房機密費」という「闇金」がある。東京五輪招致で当時の自民党の東京五輪招致推進本部長だった馳石川知事が、IOC委員約100名に1冊20万円の「思い出アルバム」をこの官房機密費を使ったと言うものである。本来は、そんなものに使用するのではなく、外交交渉など機密すべき事項に使用される予算であるが、五輪招致に使用するのは不適切である。しかも、IOC委員へOC委員への贈答品はIOC倫理規定に抵触する恐れがあり、とんでもないことだ。以前には「官房長官が機密費を選挙活動に使った」として大阪市の市民団体が告発したケースもある。麻生内閣の河村官房長官が、在任中に2億5千万円もの機密費を引き出していたとして「背任罪・詐欺罪」で告発されたものだが、不起訴処分になったこともある。

 

何でこのような不適切な使用があるのか、それはこの「官房機密費」を使用しても、誰に何のためにどれだけ使用したのか、領収書が不要であるからだ。従って、いいかえれば外交交渉など機密事項ではなく、官房長官が新車や家具、住居、金銀財宝など、あるいは飲食費、遊興費など自分や家族のために使っても一切誰もが分からない。好き勝手のし放題である。要するに、時の官房長官の「良心」に委ねているのであり、彼が誠実で悪行を行わない人間であれば、領収書が無くても問題は生じない。しかしながら、残念ながらそのような人間は少なく、特に政治家に限れば、これまで何度もニュースで報じられているように、「カネ」に目が眩む連中がほとんどと言ってよい。逆に言えば、「カネ」それも大金が欲しいために政治家になっている連中が大多数を占めている。

 

ともかくも、この「官房機密費」は年間12億円以上あるというから、我々一般庶民にとっては恐るべき金額である。使途や金額を証明する領収書を提出しなくてもいい大金が自分のすぐ近くにあれば、政治家でなくとも人間はついついカネに目が眩み、それに手を出してしまうのが本性と言うものであろう。バレなければ何にでもこれだけの大金を1年間に使用できるのである。それは言うまでもなく我々国民の税金であり、官房長官が自由に使用してよいカネである。安倍首相時代の菅官房長官は、7年8ヶ月余の官房長官在任中に使った機密費総額は86億円を超えており、前記したように馳氏は安倍首相の指示のもとにその中から五輪招致の活動費(思い出アルバム作戦など)に支出していたのである。勘ぐれば、ひょっとしてアルバムにさらに多額のカネを挟んでいたかもしれない。

 

まさに官房機密費は「闇金」であり、先の国会でも野党から官房機密費の使途の透明性を高める運用を追及されたが、岸田首相は「現状の取り扱いを維持すべきだと考えている」と居直った。さらに、当の松野官房長官は機密費の運用に関し、「国の機密保持上、使途を明らかにすることが適当でない経費として使用されており、個別の具体的な使途はお答えしていない」と説明した。言語道断と言うべきであり、全くふざけた話であり、我々の血税を、たかが一政党の自民党(官房長官)が好き勝手なことに使用できるなど絶対に許すべきでない。良識ある国民なら、こんな事を言い張る自民党を、次回の総選挙で下野させることが肝要だ。「裏金」と「闇金」は自民党の専売特許であるが、そんな政治から一刻も早く脱却しなければならない。