第53回ネット句会は、33名の参加となり、150句の投句を頂きました。
【講師選】
《永田満徳》
【特選】
133 亡骸を幾度も撫づる霜夜かな  昼顔4

 ※子どものいない夫婦で、奥さんを亡くした人の葬式に参列したことがあったが、参列者がいなくなったあと、「亡骸」をじっと見つめていた情景は身につまされ、涙を誘った。
掲句も、「幾度も撫づる」という措辞から、一人ぼっちになった寂しさが滲み出てくる句である。季語の「霜夜」との取り合わせによって、読み手の側に辛くて、切ない気持を否応なく訴えかけてくる。

【並選】
92 ばりばりの肩に熱帯ぶ牡蠣割女    慢鱚4
102 断捨離の後の抽斗冬至来る      千秋3
119 冬日向草食ふ牛の耳にタグ       ちはる1
141 木曜は脳トレ講座漱石忌        楊子2


《歌代美遥》
【特選】
76 公園に誰もゐなくて冬至の日  ゐるす1

 ※公園は、子供たちの声が響き若いお母さんたちが、交流の場でもあり平和の象徴でもある。今は、人がいないのである。
この不安感、寂寥感、人がいてこその公園に、ただそこに遊具があり、コンクリートでできた動物の型があるばかりである。人間のために作ったものが人間に拒否された、不平等の叫びの句でもある。

【並選】
24 漱石忌百葉箱に温度計         房子4
45 遺産てふ煉瓦校舎や漱石忌      寛昭2
104 丁寧にやがてばりばり歳暮解く    千秋5
109 度の強き眼鏡をとれば冬日和     明寿4



【互選三賞】

天賞  11点  1句)
119 冬日向草食ふ牛の耳にタグ  ちはる1
 ※牛も豚も今はマイナンバーが付いていますね。(寛昭)
 ※牛の生命力を感じると同時に牛は商品だったと言うリアル。季語の冬うらら、との取り合わせもいい。(千秋)

地賞  8点  3句)
57 口下手な父と分け合ふ蜜柑かな      ゐるす3
 ※反抗期の息子が炬燵の前にいる父に蜜柑をむいて半分渡す。二つ目も同じように黙って渡す。男同士の不器用な愛情が伝わります。(節子)

71 言ひ過ぎた後の酸つぱき蜜柑かな     千秋1
 ※言い過ぎを反省している様を蜜柑の酸っぱさに上手く重ねて詠まれていると思います。(一路)

 

83 女手にかなう程度の雪囲        ちはる3
 ※「かなう程度」の措辞が素敵です。叶う程度の小さな雪囲にやさしさが表れますね。(祐)

人賞  該当なし)


【入選句】

6点句  2句)
27    ばりばりと霜柱踏む車椅子       直5
 ※下五でちょっと意外性のある展開に惹かれました。(明寿)
 ※朝のルーティーンなのでしょうか?散歩に出る車椅子が踏む霜柱の「ばりばり」の音が朝の清々しさ迄伝わって来る。(房子)
133    亡骸を幾度も撫づる霜夜かな      昼顔4

5点句  2句)
25    タグ付けて神棚並ぶ年の市       楊子3
 ※年末の押し迫った様子。又、来年こそは良い年であるようにと人々の気持ちのこもった句だなと思いました。(ケイ)
136    無口なる夫のみかん詰め放題      楊子1
 ※不器用な方なのかもしれませんが、奥さまへの強い愛を感じました。どんな顔して詰めてたんでしょうね。想像すると楽しくなります。素敵な一句です。(青橙)

4点句  8句)
4    エンジンのばりばりばばば冬うらら   ゐるす5
 ※本来ならエンジンのバリバリ音は好きな音ではないのだが、冬うららの中で聴くこの渇いた音は、なぜか心地よい音に感じる。きっと、ばりばりばばばと畳み掛ける音が心地よい疾走感になっているのだと思う。(秋子)
37    リビングに靴下揺るる冬至かな     明寿1
76    公園に誰もゐなくて冬至の日      ゐるす1
82    集落をひとつ抱ける蜜柑山       隆司2

 ※村の暮らしを支える蜜柑山ですね(しどみ)

 

94    雪折やばりばりと真夜切り裂いて    ゆうま5
104    丁寧にやがてばりばり歳暮解く     千秋5
110    冬うらら印度カリーの銀の匙      祐4

 ※ソフトなイメージの季語に対して、暑い、辛いイメージの「印度カリー」、硬い、冷たいイメージの「銀の匙」と異質なものを取り合わせてあるところが新鮮であると思います。すぐにでも印度カリーを食べたくなる句です。(法子)
141    木曜は脳トレ講座漱石忌        楊子2
 ※漱石が弟子たちを集めて開いていた「木曜会」に掛けて、自分は木曜日には脳トレ講座に行っていると言っている。俳句的な可笑しみがある。(直)

3点句  10句)
10    しわくちやの手の選る蜜柑甘きこと   昼顔1
 ※長い時間で培って来られた重みがとても ステキです。(秋穂)
21    タグ切ればコートの軽くなりにけり   明寿5
 ※品質表示や値段、扱い方まで書いてあるこの「タグ」は喩に違いない。社会と繋がったものを外すと自由になれると読んだ。(楊子)
34    マフラーやタグ付けしまま貰ひたる   満徳1
43    椅子固き車窓に海や蜜柑剥く      節子1
45    遺産てふ煉瓦校舎や漱石忌       寛昭2

46    ばりばりと破る通知書漱石忌      智子1
66    眩しめるものに若さや冬至風呂     隆司1
 ※年を重ねた洗練さるた成熟度も素敵ですが未完成でも可能性を秘めた限りない若さに憧憬を感じます。(ちはる)
69    共学に変わりし母校漱石忌       ひろし2
 ※時代の流れを感じます。(ゐるす)
128    仏頂面の猫のご帰還漱石忌       秋子4
130    文机かくも小さき漱石忌        美音2
 ※実感としてよく理解できる句です。普遍性がありすぎるところが、難点ですが、きっちりとまとまって上手い句です(隆司)
2点句  26句)
1    「ハッシュタグ真夏の海」と悴む手   青橙5
 ※悴む手で夏に思いを巡らせて検索のキーボードを打っている。タグの読込みで上手いと思います。(慢鱚)
9    漱石忌ぶつかけうどんの一気喰ひ    和1
 ※中七下五の勢いが漱石忌とぶつかる事の驚き。(浮游子)
15    チャップリンどこか似てゐる漱石忌   隆司3
23    漱石忌猫の鼻毛の揺れてをり      寛昭1
 ※「猫の鼻毛の揺れており」という基底部は、猫の可愛さが上手く詠まれて、ユーモラスもあり。作者の大発見が詠まれていると思います。この基底部と季語の取り合わせが良いと思います。漱石の『吾輩は猫である』という一番有名な小説もユーモラスが沢山あるから。(亜仁子)
24    漱石忌百葉箱に温度計         房子4

33    まはり道近道逃げ道漱石忌       ゆうま2
35    やうやくと地軸目覚める冬至かな    慢鱚5
38    わが墓とさだめし里の蜜柑剥く     満徳5
44    胃薬は抽斗の奥漱石忌         秋子1
48    蜜柑剥く話しのつぎほ探しつつ     房子5

49    バリバリと東尋坊に鰤起           和5
55    一病に息災の日々蜜柑喰ぶ       夢積2
58    円周率諳んじる子や蜜柑剥く      楊子5
60    何かしら言いたげな娘に剥く蜜柑    昼顔2
78    三度目は無いよと教師寒日和      智子5
 ※寒の頃だから卒業試験か進級試験の追試だろう。二度失敗したのだ。今度失敗したら後はないといわれたときの気持ちが、「寒日和」に託されている。(ゆうま)
79    歯の痛み頬に冷んやり初蜜柑      しどみ4
 ※歯の痛みと冷たい蜜柑の触感の対比が効いている。(ひろし)
81    自慢気にブランドのタグ松葉蟹     一路5
 ※ズワイガニは日本海の水揚げされた地域によって呼び名も違い、越前蟹、間人蟹などと云われている。我が田舎山陰沖で採れたズワイガニは松葉蟹と呼ばれ、冬の味覚の王様のブランド品である。それにしても不漁によって何と高価になった事であろう!!。(栄太郎)
84    鐘の音を合図に蜜柑山下る       節子5
87    隅田川スカイツリーの冬至影      ひろし1
92    ばりばりの肩に熱帯ぶ牡蠣割女     慢鱚4

95    煎餅は固焼が良し漱石忌        千秋2
102    断捨離の後の抽斗冬至来る       千秋3
106    爪切でセーターのタグ切つてをり    千秋4
 ※爪切りで、買ってきた息子のセーターのタグを切る母親の景色が見える。(満)
109    度の強き眼鏡をとれば冬日和      明寿4
127    附下のたとう紙替えて春支度      ひろし3
 ※季語の春支度は年用意の傍題であるが、附下という華やかな着物のたとう紙を替えるという措辞で、新年を迎えるにあたっての、気持の高揚がわかり、季語と響きあっていると思う
 また、兼題の度をうまく使っている。(昼顔)
148    忖度も無くて身にしむ隙間風      祐3

1点句    37句)
5    オレンジを二つに割りて冬至かな    美音4
6    お尻から剥いて三つ目蜜柑食ふ     智子4
7    けふもまた昼のドラマや蜜柑剥く    秋子5
8    ごみに霜ばりばりと寄るバッカー車   青橙4
12    タグ外る古きトランク冬銀河      浮游子4

16    どうみても蜜柑のタグはお人好し    ゆうま4
17    なつみとは蜜柑農家の娘の名      しどみ2
18    ばりばりとたくあん食うて登校す    青橙3
22    漱石忌指に数うる余生かな       満2
28    ペンギンのとぼとぼ帰る冬至の日    慢鱚1

29    競い合う蜜柑の糖度ブランド化     和3
30    ほくほくと舌にころがる冬至かな    寛昭4
31    ポケットに蜜柑の土産昭和かな     秋穂1
32    ほわほわの吾子のほつぺや冬至風呂   智子3
36    ユーモラス奇想天外漱石忌       秋穂4

39    バリバリとうるめ鰯は頭から      和4
41    阿古屋貝真珠宿せる冬至かな      ゆうま1
47    ばりばりと氷割り行く登校児      一路4
52    一所明るき湖水漱石忌         房子1
62    外套の襟にタグあり去年のまま     栄太郎4

72    バリバリと頑張る日々や十二月     亜仁子5
77    歳の市一桁違ふ手書きタグ       昼顔5
93    水底の石の淡きや冬至けふ       浮游子2
96    痘痕面なれど甘露や菊蜜柑       一路2
97    銭湯に今宵柚子風呂解放す       房子3

103    茶の花や何度も通る気が付かぬ     節子3
108    度が過ぎて孫の数だけ雪達磨      満5
115    ばりばりの女社長や冬桜        満徳2
117    冬至来てドンと胸張る里の山      しどみ1
122    湯加減の丁度頃合ひ冬至風呂      一路1

123    日だまりに素うどん啜る冬至かな    秋子3
124    猫抱え二度寢している日向ぼこ     祐5
126    病む友にふみを書きをり漱石忌     とも子5
131    文机に背中の丸し漱石忌        明寿3
143    野良猫に貰い手がつき漱石忌      ちはる4

144    柚子の実の肩に背に浮く冬至の湯    栄太郎2
149    漱石の忌猫が苦手と言えぬ我      しどみ3

(以上)

【個人別 高得点者】(合計点ーー入選句数)
ちはる  20点  3句
千秋   18点  3句5句
ゐるす  16点  
楊子   16点  4句
昼顔   12点  4句

明寿   10点  4句
隆司   9点  3句
ゆうま  8点  4句
ひろし  7点  3句
秋子   7点  4句
智子   7点  4句
祐    7点  3句

和    6点  4句
寛昭   6点  3句
節子   6点  3句
直    6点  1句
房子   6点  4句
満徳   6点  3句
しどみ  5点  4句
一路   5点  4句
慢鱚   5点  3句

(以上)

ご健吟の皆さん、おめでとうございます。
(今回の参加者33名)(順不同、敬称略)

永田満徳(講師選)、歌代美遥(講師選)上山智子、今村とも子、
 熊谷房子、夢積、とばやまちはる、江口秋子、中村 秋穂、
 祐(牧内登志雄)、青橙(たかはし)、寺嶋法子、眉山ケイ、
 ゆうま、岩永靜代(昼顔)、浮游子、西村楊子、向瀬美音、
 武藤隆司、若松節子、山下明寿、辻井市郎(一路)、中野千秋、
 桑本栄太郎、滿/杉山満、慢鱚/大工原一彦、大津留 直、
 古閑寛昭、本田しどみ、ゐるす、長谷川ひろし、亜仁子
北野和良、

集計には慎重を期しましたが、投句、選句、選評などにコピーの誤りがあるやも知れません。
集計につき疑義があればご連絡下さい。
また整理方法につきご意見があればご遠慮無くお知らせ下さい。
・またExcelシートはこちらに保管されています。(Excelが必要です)
⇒http://ocha.g1.xrea.com/haiku/daigaku_net_kukai.html



それでは、また来年にお会いしましょう。