気仙沼物語 16 司博之さて、冬男の追い回しは、半年経って終わった様だ。しかし、同時に、愛おしさが募れば、募るほど、自分の首を しめる様な感情が芽生え始めていた。つまり、初体験の奴への嫉妬だ。いや、恨みにも似た感情だ。野球拳から始まった事がある。ほくろ の数を数え合っていたら始まった事も。そうとう女慣れした野郎だ。こんなにも純粋無垢で、純朴で、従順で、一途な彼女をモテ遊んだ野郎!ただ、決して、クチに出してはいけないそいつの悪口。私は、それを押さえる事に苦悩しはじめた。