文部科学省の「大学の国際化のためのネットワーク形成推進事業」
(通称グローバル30、G30)が3月で終了した。早稲田大学で国際化を担当している内田勝一副総長にG30の成果と課題にづいて寄稿してもらった。
2014.4.7
内田 勝一                                早稲田大学副総長 
閉塞感破る起爆剤に
    


 G30で文科省は13大学を選定し、教育の国際化を推進する全学的な体制整備を求めてきた。G30とは、海外の優秀な留学生を日本に引きつけるために、英語のみによる学位取得が可能なコースの設置、優秀な外国人教員の採用、留学生獲得のための海外広報、海外大学共同利用事務所の開設等を促す事業。3月で5年の実施期間を終えた。


 G30創設の背景には、世界的な留学生獲得の競争激化がある。
 米国は、以前から先端的な科学技術研究を推進し、気候変動・エネルギー問題をはじめとする全地球的課題を解決するために、海外から優秀な研究者や大学院生を国家戦略として獲得してきた。
 オーストラリアなどの英語圏諸国も、大学教育を輸出産業として発展させ、多くの留学生を集めて高額の授業料を徴求。その収入を高等教育の財源とし、卒業した留学生を自国で就職させ、産業競争力を強化している。
 中国はアフリカ等からの優秀な留学生が本国に帰国後、中国の影響力を高めるようにするしたたかな戦略を実行している。韓国は日本以上に経済のグローバル化が進み、大学では英語での授業が本格化した。競争に立ち遅れた日本は、2009年にG30を開始した。その結果、
英語のみで学位取得が可能なコースは156(学部33・大学院123)となり、13大学で受け入れた留学生は13年3月には2万8636人(日本の大学全体の留学生数の20・6%)、外国人教員は3097人に達した。
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 留学生獲得や国際化推進の基盤づくりは進んだが、成果にはばらつきがある。例えば、理工系大学院は英語コースをG30以前から実施していたので、多くの英語コースを設置でき、多数の留学生を受け入れた。しかし、学部段階ではG30採択後に初めて英語コースを設置した大学も多く、受け入れは伸び悩んだ。
 早稲田大学は04年、学生の3分の1を外国人とし、原則として全授業を英語で行い、海外大学での1年間の学習を必須とする国際教養学部を開設していた。その経験をもとに、G30では5学部・6大学院研究科に英語プログラムを設置し、留学生の受け入れ数を4427人と大幅に増やした。
 いずれにせよ、13大学は今後もG30へというブランドを発展させ、優秀な留学生をより多く受け入れるモデル大学として、他大学を牽引(けんいん)しなければならない。
「グローバル30」国が国際支援 
海外へも積極派遣 閉塞感破る起爆剤に 留学生獲得 牽引を
 2014.4.7
他方において
グローバル化した世界での活躍できる専門的知識、幅広い教養、優れた外国語能力、高い志を持つ巳本人学生を育てることが、わが国および産業界の切実な課題となっている。
 文科省は、12年から始めた「経済社会の発展を牽引するグローバル人材育成推進事業」で学生のグローバル化を推進する教育体制の整備を支援するために、全国42大学を指定した。内向き思考の学生に留学を促し、異なる社会を体験させ多様な価値載を学ばせることで日本社会の閉塞感を打ち破ろうとしている。
 日本人学生の海外派遣と優秀な留学生の受け入れは、大学全体をグローバル化するための車の両輪であり、留学から帰った日本人学生と外国人学生が同じキャンパスで切磋琢磨(せっさたくま)する環境が必要である。
 早稲田大学では、2年前に作成した中期計画「ビジョン150」において、全学生に海外学習の機会を与え、留学生を1万人とする施策を進めている。さらに、学期制の変更、日本語と英語の2言語による教育、対話型・双方向型学習の促進等の教育方法の改革、留学生と日本人学生とが混在する学生寮の整備、迅速で的確な意思決定を可能とするガバナンス改革等にも力を注いでいる。
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折しも「教育再生実行会議」は第3次提書で、大学改革の課題にグローバル化に対応した教育環境の整備やイノベーション人材の育墳ガバナンス改革等を挙げた。少子高齢化が進み高度な知識基盤社会となったわが国では、社会の全ての分野で制度改革とイノベーションが不可欠である。イノベトションは多様な価値観が交錯する社会の方が生まれやすい。
日本がイノベーションに富む社会となるには、多様な文化的背景を有する優秀な外国人学生が卒業後も日本に定着しやすい環境整備が必要だ。
 「大学力は国力そのもの」である。外国人であれ日本人であれ、優秀な人材こそが日本が唯一誇れる資源であり、イノベーション人材の育成には大学の研究力とガバナンスの強化が欠かせない。今こそ、大学の国公私立面枠組みや文科省の壁を越えた全体的な国家戦略を構築すべきである。


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大学の海外進出問題を以前にも取り上げましたあが、国内の大学の変革も重要だ。
いままで日本はガラパゴス的進化を遂げてきたと言われるけれど、それは常に到達すべき高い目標が有り、それを自らの努力で達成しようという意欲を持っていたかで、それがなければ、他人に任せて、自らこのような国内の様子にはならなかったであろう。
いまや日本は学ぶべき立場から学ばれる立場になっているように思う。
新しい大学の姿を作り出すのもだいじなことだ。
東南アジアの国々の人たちの受け入れを、またアフリカ諸国の人たちの受け入れを進めることが必要だ。ただ言葉を万でもらうということから、英語で授業ができる体制になるということは、とても大きな貢献だと思う。英語は国際語として利用されるべきであって、その上に日本語を学んで、日本文化を深めようとする人たちが増えることを期待する