株式制改造 

「1978年から始まる中国の経済改革は、形式は計画経済から市場経済への転換であったが、実質は社会的資源の新たな配分であり、各種の利益をめぐるコネ関係の再調整であった。」

大文化革命後の改革解放路線の20年間を分析したのがこの本である。冒頭に著者は、上のようにこの期間を表現している。中国では国有企業の民営化を《株式制改造》と表現して、株式会社化を進めたのだ。つまり資本主義制度の下での<企業>を作り出そうとしたのだが、その「企業」が株式制改造で着目して実践したのが、企業の高度化ではなくて、金を集めることであった。

「多くの企業の管理経営者が注目したのは株式制の資金調達機能だけであり、・・・自社の経営規模を超える株式の発行に躍起となって・・、たくさんの資金を集めること>に集中した。P41

調達した資金は、法を無視した運用、うまり投機的な分野、不動産や株、先物取引に使われた。

「株式市場は過度な投機的取引が繁殖する肥沃な土壌と化している。」p42

中国の株式市場は《政府が「胴元」をつとめるスーパー大賭博場》になる。(p47)

つまり企業というものの役割本来のあり方とはかけ離れて、株式市場の集金機能をフル活用するために、企業の業績を偽ったり、ごまかしたりということが中国での「企業精神」になった。

この第1章の内容を読むと正直唖然とする。言ってみればライブドアーのホリエモンなど可愛いもので、そのけた違いの「企業精神」でもって行動していたと言える・・・・・・


この本の最初の部分を読むだけでため息が出る。この著者は実に清廉潔白な精神の持ち主であり、多くの憤りを覚えながら、現状分析をしたのだろう。