長年暮らしたこの世を去る時
この世でコツコツ織り込んできた衣を初めて脱いでみる。一枚、又一枚。
いとおしい衣。
山程の思いは、紡がれ美しく織りとられ、ご自分の人生の豊かさを見せてくれる。
人生そのものである、大切なその衣を、
置いていく方々が居る。
どうぞ、これを使ってください。
毎日が戦場だったこともあった。
逃げも隠れも出来ず矢面に立つことも、身動きの取れない中で耐えなければならないことも、
ただ生きる事が、何故これ程苦しいのかと、そんな時も、生きて命を繋いで、
苦しみに勝る豊な人生を。
自分がこの世で積み上げた徳。
魂の金貨を、
投げ出し、丸ごと後世に。
思い残しも、後悔も、衣に託し、
光揺れる ふるさと へ 帰って行く。
私達は御祭りいたします。
貴方様の尊い御心を。
思いやりを戴く度に、人の中に思いやりが育つ。その御心をも、繋いでいける。
手を合わせて感謝申し上げます。
こうして御力のとまる場所がそこここに、どれだけあるだろう。
私達は、気づかぬままにも、いつも、まもられている。
例え、生まれ落ちた場所に、約束された暖かな懐が無かったとしても、
雨の様に降り注ぐ恵を浴びながら、
何者かの愛情に育てられる。
魂の記憶を頼りに、
育ちからくみ取った経験を使い、
唯一無二の人生を。
先人のお気持ちに、お答えいたしましょう。
いつでも、その尊い全ての思いと共に歩みたい。
以上。去年の冬に書いたメモ。
日にち判らなくなったので、ここに入れておく。
私には実際のところ、その力が何なのかわからないけれど、何かがどんな形でか、存在する。何者かの思いで、辺りは輝いている。その力を衣と表現した。