味噌醤油仕込人顛末記

山口県萩市の味噌醤油蔵から日々のあれこれを発信


テーマ:
其の壱 小麦を炒る(炒煎)

本日より当蔵の醤油の仕込から発酵~熟成~製品化までの工程を順に書いていきたいと思います。
あまり専門的にならない様、且つ省略せずに、を目標に。

本醸造醤油製造工程 出典:しょうゆ情報センター



まず小麦の炒煎から。使用している小麦は、山口県産『農林61号』や『ニシノカオリ』。


熱した砂の中に小麦を通して炒る方式を採っています。ここで炒り釜に入れる量と火力の調節で炒り加減を調節します。



炒る前の小麦。


炒った後の小麦です。膨らんで、キツネ色になります。
炒り加減は見た目だけだと照明のばらつきや元の小麦の色の濃淡もあるので、香りや膨らみ加減で判断した方が良いと思っています。炒り加減が弱いと生っぽい匂いがします。
基準は膨らんで割れ気味で香ばしい香り。

炒るのに凡そ半日掛かるので、町内のかなり遠くまで香ばしいかおりが漂っているそうです。好きな作業です。

次回は炒った小麦を粉にする工程です。

其の弐 炒った小麦を挽く

炒った小麦を冷ました後、粉挽きします。松江市の内田醤油さんのお勧めで、より細かく砕ける装置に替えました。その粉砕機は内田様から 譲って頂いた物です。大感謝であります。成分分析で確かめた所、以前よりアルコール分が高くなっていました。これでより香り高い醤油になります。


其の参 大豆を水に漬ける(浸漬)

大豆を煮る前日に洗った後、水に漬け水分を完全に含ませます。

水は大豆の量の約2倍入れます。

膨らむ途中で水面より上になる部分があると良くないので、豆を平らにしておきます。


翌日朝の状態
約2倍に膨らみます。



其の四 大豆を蒸す(煮沸)

大豆蒸しの工程です。大きな鉄製の圧力釜を使います。最近はステンレス製に替える醬油屋も多いようですが、(安物、と言っても大変高価ですが)ケチって釜の厚みが薄いものにすると、あまり長くはもたないと聞いたことがあります。この手の圧力釜を圧力容器と言って、一年に一度、県の機関が工場に出向きひび割れや、釜の耐久度に応じた圧力を超えると噴き出す、安全弁の作動が正常であるか調べ一年間の使用が認められます。

当蔵のボイラーの能力では釜全体に熱が溜まるまで数十分かかります。下から出ているのは水蒸気がお湯化したもの(ドレン)です。ドレンが出ている所は、釜の 蓋にドレン抜きを付けたもので、圧力容器の改造は労働基準監督署の審査、許可が必要です。提出する書類も多く難関でした。

熱が充分にいきわたって蒸気が噴き出したところです。噴き出し口のコックを全開にしたまま、しばらくすると薄茶色のアメも一緒に出始めます。そのまま数分間アメ抜きをします。アメというのは大豆に熱を加えると出てくるベトッとした飴色のもので, 充分行った方が良いです。


その後コックを殆ど閉じて、飴抜きとドレン抜きをしながら圧力を上げていきます。高圧で短時間で蒸すので緊張を要します。早朝の作業なので寝不足や二日酔いには要注意・・・・・・。
何 k圧で何分間。それを何度も変え後で小麦と一緒に麹にする大豆の最適な蒸し具合を探りました。松江の内田醤油さんに教えを乞おうと工場に二度行き、一緒に 大豆を蒸す作業をさせて頂いたり、ドレン抜きの時間や蒸し時間も教えて貰いましたが、そのとおりにすると他所の蔵のデータは大体の参考にしかならない事が 分りました。ボイラーの能力、圧力容器の容量、大豆の量が全て違うからです。学んだのは内田さんの仕事に対する情熱と、作業中の真剣な眼差し、動き。そし て仕事が終わった後の満足気な顔でした。蒸し終わったら、釜の中を真空状態にして急激に大豆を冷まします。


釜の内側にベタ付かいよう限界まで蒸しあげた大豆。初めての頃は蒸し過ぎて後の作業が大変な事になったり、今度は蒸し時間を短くして圧力を上げたり、蒸し時間を長くして圧力を下げたりの試行錯誤。ある程度、よい感じになるまで4シーズンは掛かりました。
栗に似たような甘くて良い味です。
香りも強いんです。

其の五 大豆と小麦を混ぜる

蒸し終えた大豆が入った蒸し缶の中へ炒った小麦を入れて、缶を回転させて混ぜ合わせます。

小麦の粉が大豆にびっしり付きました。

次回はいよいよ麹づくりです。

其の六 麹づくり 一日目

昼過ぎに大豆と小麦に種麹(たねこうじ)を加えながら32℃前後に保温された麹室(こうじむろ)に入れます。


これが種麹です。簡単に言えば麹菌を純粋培養して乾燥させたもので、これを混ぜて大豆と小麦に麹菌を行き渡らせるわけです。
粒が非常に細かく、のど薬の「龍角散」の緑色と思ってもらえればわかりやすいと思います。麹菌には色々なタイプがあり、味噌用や醤油用は勿論の事、増殖の速度が速いものやゆっくりのものなど様々で、最終的にどんな味の醤油にするかで種類を選択します。

夕方ごろから麹菌の働きが活発化し、夜半には次第に温度が上がってきます。

其の七 麹づくり 二日目

二日目の朝、麹菌が繁殖して温度が上がり全体が固く締まってくるので一回目の手入れ(砕いて混ぜる)をしてあげます。写真で一日目の状態より白っぽく変わっているのがわかるでしょうか。

夕方もう一度手入れをします。麹の温度がどんどん上がってくるので、27度程度まで下げます。冬場でも室温が30度以上もあるので、春先でも汗をかくほど暑い作業です。

次回は出来上がった麹を仕込み桶に入れる工程です。

其の八 麹づくり 三日目~出麹(仕込)


三日目の昼ごろまで麹菌を大豆と小麦に食い込ませたら、いよい桶に塩水と混ぜながら仕込みます(出麹)。
二日目に比べるとよりいっそう麹菌が繁殖して緑色に変わっています。


このまま食べても美味しいです。栗のような甘さに深みが出ています。
香りもなんとも言えぬ良いものです。
麹がうまく出来て、ほっと一安心する時です。



仕込中の様子です。


仕込み後。


塩水は仕込んだ後の全体の塩度が17%~18%程の濃度を狙って調節します(諸味狙い塩分濃度)。
同量の原料で仕込んだものでも、麹の水分は毎回違うし、季節やその時の原料、その他諸々の影響で塩分濃度は変わってくるので仕込桶ごとに調べて確認します。仕込んだ後の塩分濃度は発酵~熟成具合に決定的に関わっていて、味を決定すると言ってもよい程、大事なものです。
簡単に言えば、良い塩梅にするわけです。

当蔵では加工前の大豆と小麦の質量の同量の塩水(汲水)で仕込んでいます。
醤油業界ではこれを10水仕込と呼びます。例えば11水仕込は大豆5石+小麦5石に対して、塩水11石となります(1石は1斗の10倍、1斗は1升の10倍、1升は1合の10倍)。

当蔵の一回分の仕込量は、原料大豆300kg、原料小麦300kg、塩225kg+水

仕込を三度繰り返して、仕込桶が一杯になります。これを醤油屋さんによっては三段仕込みと言われているところもあります。
これまで書いた仕込の工程は主に10月から5月までの涼しい時期に行っております。当蔵のような小規模の醤油蔵では殆どそうだと思います。
寒 い時期に仕込んだものほど、美味しい醤油になるという意見もありますが(寒仕込み)それは、日本酒の話と混同されている意見だと思います。日本酒は簡単に 言えば冬に仕込んで春に絞る温度が上昇していく過程の期間だけ醗酵させます。醤油は天然醸造だと最低でも一年半は醗酵~熟成させたほうがよろしいので、実 際は春先に仕込むのが一番良いと思っています。冬仕込みだと中々スムーズに醗酵していかないのが経験上分ります。

ただ、日本酒より醗酵期間がかなり長いので別モノですよ。と言いたいだけです。

次回は仕込み終わった後、混ぜる工程です(荒櫂)。

其の九 荒櫂(あらがい)

麹の固形分と塩水がすぐに分離してくるので(麹が浮き上がる)、仕込んだ日の次か、次の次の日に写真の竹の先に板が付いたもので混ぜます。これを荒櫂と言います。

金属パイプを突っ込み空気を入れながらですが、仕込んだばかりの状態は麹と塩水が中々馴染まず、かなりの力仕事です。突っ込んでは上げるの繰り返し。


混ぜた後。
荒櫂はその後3日置き程度に約2週間行います。

其の十 諸味の攪拌(もろみのかくはん) 発酵~熟成

仕込桶の中の麹はアルコール発酵から始まりアミノ酸発酵を経て、およそ一年半をかけ(銘柄によってはもっと長いものもあります)ぴちぴちと音をたてながらゆっくりと熟成します。
桶 ごとの様子を見計らって、中身が均一になるように櫂入れ(かいいれ)をして空気を入れつつ混ぜてあげます。夏場の発酵最盛期は表面が膨らんで(これを湧く といいます)ひび割れてくるので櫂入れを多めに、冬場はさほど湧かないので少なめにというようにお世話します。二回目の夏を過ぎると、それ程頻繁に混ぜな くても大丈夫です。長年この仕事をしていると、かわいい子供のように思えてきて、文字通りお世話という気持ちです。

一ヶ月程まで、まだ強い麹臭がありますが三ヶ月も経つと麹臭が薄まります。


五ヶ月目。発酵が強まり固形分が表面に浮いてひび割れています。だんだん醤油らしい良い香りがしてきました。


十三ヶ月目。熟成期間です。色も大分濃くなっています。もう絞って醤油にするには充分の味と香り。


一年半。芳香が漂います。おいしくなりますように。

次は諸味を絞る工程です。いよいよ醤油になります。

其の拾壱 諸味を絞る 1

一年半程熟成した諸味を木枠に沿って布(風呂敷と呼んでいます)の中に入れて絞ります。
このような具合です。


風呂敷を広げそこに諸味を入れる


風呂敷をたたむ

布は200枚。慣れれば半日で終わりますが足をかなり踏ん張るのでだるくなり、他の事をやりつつ。

其の拾壱 諸味を絞る 2


呂敷は3列。最後の一枚に諸味を流し終えたところを撮ってみました。
 
木枠5段に積んで木の重しを乗せ、しばらくそのまま置いて全体が沈んできたら木枠を取って上から圧力を掛けて絞ります。

流れ出た醤油(生揚)の中の油を浮かばせて取り去る為、2つに分けた槽のある道具に通す。二つの槽の下側に空間があり、出口(左前)に行く前に手前側(右)の方に油が浮かび上がります。これで右側に浮かんだ油だけ分離出来ます。
最終的に、この生揚げを塩分調整し、熱を加えてさらに風味をよく仕上げます。
醤油の出来上がりです。

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