貧乏花見

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今年の桜前線は例年よりは駆け足でしたね

もう数日すると入学式。

それまでは少し桜の花にも我慢してもらって

枝にしがみついていてほしいものです。

 

 

数日前、近所の親水緑道では早朝から

シートを敷いてお花見の場所取りをしていました。

整然と敷いている様子から、毎年この季節を

この場所で楽しみにされているんでしょう。

 

上方落語に「貧乏花見」という落語があります。

この落語は大正時代に東京に移され「長屋の花見」と

題して口演されてるお噺。

落語に登場するくらいですから、お花見の歴史は相当な

もんやろなーと調べてみたら奈良時代からだとか。

お花見には千年以上の歴史があるんですね。

 

桂米朝さんの「貧乏花見」には家賃って何?

家賃?長いこと払ってないな〜と、とぼける長屋の

住人がみんなでお花見に行くお話。

お酒を買う金が無いから、お茶持って、

周りが酒盛りなら、うちらは茶か盛りやと盛り上がる(笑)

でもお花見にはええ着物(べべ)着て来てる人も

いるから、長屋の住人はついひがむ気持ちもでてくる。

 

乙「ええ、えらい違いやなあ。おい。親子二人で百円からの

ものを体へつけて、ご馳走持って花見に行く奴があるかと

思たら、二人合わして十五銭になら着物着て、それ見て

ぼやいている奴がある。おらもういやなってきた」

 

甲「もうそんな情けないこと言いないな。あの人らはやな、

先の生でええことしはったんやさかい、今はええ夢を

見てると思てたらええのや。とかくこの世は夢の世の中やで。

ええ夢を見てはるてなもんや」

 

乙「ほな、わいら、年中悪夢におそわれてるのんか」

 

甲「もう、そんな心細いこと言い無いな、お前。

人間、気の持ちようやで、気で気を養うちゅうことが

でけなあかんなぁ。花見に行きたかったら行ったらええねん、

木戸銭要れへん。花ただや、見に行きいな」

 

乙「見に行きいな言うたかて、お前・・こんな格好で」

 

甲「こんな格好ちゅうたかて、花見に行くのやないかいな。

着物を見せに行くのやないがな。ええ着物着て行こうが、

ぼろさげて行こうが、花は咲きよう変わらへんがな。

花を見に行くのやがな」

 

米朝落語全集増補改訂版 第六巻「貧乏花見」より

 

 

 

 

ボロは着ててもココロは錦

 

ここに登場する長屋の住人は、どんなにみすぼらしくとも

「人間、気の持ちようやで、気で気を養うちゅう」と

気持ちまでは絶対腐らない、この心意気。

 

これまで桂米朝さんが口演されてきた噺が

収められていますから、落語好きにとってはたまりません。

この全集の一番の魅力は桂米朝さんの解説です。

すべての噺に米朝さんの丁寧な解説が記されています。

「貧乏花見」の解説の最後を米朝さんはこう締めくくります。

 

しかしこの、バイタリティあふれる陽気で洒落のめした

長屋の連中さんに、私は不遇時代、ずいぶん励まされたものでした。

「お前、何をくよくよしてるねん。考えたかてしょうがないか。

陽気に行け、陽気に。明日は明日の風が吹くわい。

いざとなったら度胸据えてしまえ」と・・。

 

落語家が励まされた噺。

「貧乏花見」に限らず、忘れちゃいけないことを

落語はいっぱい教えてくれます。そのうえ笑いも付けて。

 

「落語は人間の業の肯定」は立川談志さんの至言。

 

落語を聴くだけではもったいない。

落語を読む。

この米朝全集〈全八巻〉はおすすめ。

噺のお題の五十音順に第一巻から収められています。

「貧乏花見」の他には第六巻には「初天神」や「はてなの茶碗」

「百年目」らの21編が堪能できますよ。

 

 

 

by カエレバ