ルパン三世と時代の編纂 | 直芯のブログ

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徒然なるままに、心に移り行くよしなし事を・・・

 世界は1960年代から始まったと私は思っている。なぜそう思うのかと言うと、それ以前の時代は第二次大戦の影響が残っていて、日本を例にとれば、中国残留孤児を初め、そこかしこに戦後の影響が残っていた。60年代に入ってもそれは同じだったが、それでも今の時代に繋がる新たなスタートを切った時代だったと思うのだ。そのきっかけが東京オリンピックであり、テレビでは『サンダーバード』だった。『サンダーバード』が『ウルトラマン』を生み、やがて『仮面ライダー』『ガンダム』のSF御三家を生むルーツになった。
 『ウルトラマン』より前の特撮ヒーローは、全部白黒だった。アニメも白黒だった。寅さんを観るといい。映画版の寅さんは60年代に第一作が作られたが、そのちょっと前のTVドラマ版寅さんは白黒作品だったのだ。映画が完全にカラー(当時の名称は総天然色)に移行したのは1960年代からだった。それ以前の記録映像はほとんど白黒で、それ以前の時代には色そのものが存在してなかったのではないか?との錯覚まで覚える。
 それともう一つの理由は音楽になる。60年代はエルヴィス・プレスリーの全盛期だった。プレスリーの前にはロックという音楽はなく、プレスリーの前には何もなかったのだ。プレスリーは時代の色を創った。プレスリーが現れなければ、その後の音楽は何もなかった。その後、70年代にビートルズ、80年代にマイケル・ジャクソンが現れ、それぞれの時代の色を創っていた。
 60年代、70年代、80年代には流行というものが存在した。ファッションでも音楽でも映画でも、それぞれ独特の時代の雰囲気があった。あの頃に比べれば、今の時代は流行なんてないに等しい。60年代に流行したファッションは70年代には恥ずかしくて着られなくなり、70年代に流行したファッションは80年代には着られなかった。
 90年代からリバイバル・ブームが起き、70年代と同じ恰好をしても初めて通用するようになった。思えば90年代は、60年代と70年代と80年代の流行を統合したようなもので、2010年代前半に至るまで長~い期間に亘って続いた。
 こうしたわけで、世界は1960年代から始まったと思っている。
 この歴史を如実に表しているアニメがある。それが『ルパン三世』だ。『ルパン三世』のTVシリーズは3回あった。第1期は1971~72年、第2期は1977~80年、第3期は1984~85年の3回だ。それぞれ「旧ルパン」「新ルパン」「ルパン三世パートⅢ」と呼ばれる。旧ルパンは60年代のような雰囲気を持ち、新ルパンはいかにも70年代らしい雰囲気を持ち、ルパン三世パートⅢは80年代の雰囲気が濃厚に出ていた。私は、雰囲気という言葉は風息という表現が変化したものではないかと思っている。風という言葉は、空気感をよく表していると思う。

 そして90年代以降のルパンは、70年代の雰囲気を持つ第二期シリーズのイメージを中心に、3つのルパンが統合されている。現実世界のファッションでも、それは同じだった。
 この時代の雰囲気というのが、それぞれのTVシリーズの主題歌にも、如実に3つの時代の特徴が表れているから面白い。そこがルパン三世の音楽の魅力の一つでもある。そういう目で見直してみると、『ルパン三世』の作品世界が時代の見取図として見えなくもない、壮大な体系に見えて来るのだ。