約3年間という長いコロナ禍を経て、再び活況を取り戻しつつある宿泊業界。
インバウンド需要の急回復を中心に右肩上がりに成長している。
事業承継に絡むM&Aの動向も、コロナ前よりもコロナ後の方が、件数は増加傾向にある。
実際、昨年頃から、地元の老舗・有名な旅館のM&Aのニュースが飛び込んできて驚きをもって見ていたが、
最近はあまり驚かなくなってきた。旅館のM&Aは、珍しい時代ではなくなりつつあるのかもしれない。
ホテルや旅館などの宿泊施設の不動産をM&Aする場合は、一般企業とは異なり、
業界独特のさまざまな理由、要素が関係してくる。
そこでは当然ながら、「売れる旅館」と「売れない旅館」とに、評価区分をされるのが現実の話。
そこで今回のテーマは、M&Aで高評価となる「売れる旅館」について、宿泊業界と事業承継の専門家として、
簡単に解説をしたい。
今回は、旅館のM&Aの賛否は、別の話としてご容赦いただきたい。
M&Aで「売れる旅館」の特徴3選
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特徴1:明確なコンセプトと強み
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ターゲット顧客層が明確であること(例:ファミリー層、カップル、外国人観光客など)
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他にはない独自のサービスや魅力を持っていること(例:温泉、料理、体験プログラム、絶景など)
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コンセプトに基づいた内外装やアメニティ、従業員の教育などが徹底されていること(魅力的なコンテンツを持っている)
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◎M&Aにおけるメリット:
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独自性やコンセプトは、競合他社との差別化要因となり、高い評価につながります。
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明確なターゲット層は、将来的な収益性を見込みやすく、投資家にとって魅力的な要素となります。
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特徴2:安定した経営状況と将来性
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過去数年間の業績が安定していること(売上高、利益率、稼働率、人件費率、原価率など)
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財務体質が健全であること(負債比率、自己資本比率など)
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今後の成長戦略や事業計画が明確であること
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地域経済や観光動向など、エリア環境の成長性が見込めること
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◎M&Aにおけるメリット:
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安定した収益性は、投資リスクを低減し、M&Aの成功確率を高めます。
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健全な財務状況は、デューデリジェンス(買収監査)においてプラスに評価され、スムーズな取引につながります。
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特徴3:良好な運営体制と人材
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従業員の定着率が高く、組織力がある(組織が活性化)こと
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従業員の教育・研修制度が充実しており、サービス品質が高いこと
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経営陣のリーダーシップとマネジメント能力が高いこと
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地域社会との良好な関係を築いていること
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◎M&Aにおけるメリット:
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有能な人材は、買収後の事業運営を円滑に進める上で不可欠な要素です。
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組織力は、事業の継続性や成長性を担保するものとして、高く評価されます。
まとめ
地域経営は、観光が基幹産業になっていることが多く、その多くを旅館が支えています。
「持続可能性」の重要性が問われる今、100年企業の多くは旅館に多く見られますが、
旅館経営の大きな課題は「事業承継」です。
家督相続が当たり前だった時代と異なり、今の時代は事業承継をする子供、親族が減りつつあることも事実。
そんな中で事業承継の選択肢の1つとして、M&Aを見つめておくことは、結果親族内承継で承継する上でも、
大きな参考になるはずです。上記で挙げた3つの特徴は、親族内承継でもポイントになるからです。
このテーマが、持続可能な旅館経営のための参考になれば、嬉しく思います。