アシッジを出た列車は平野を西に進み、テヴェレ河を渡ったところがペルージアポンテサンジォヴァンニ、丘の上の街ペルージアを回り込んで更に西に進むと、トラシメーノ湖が見えて来る。

 

トラシメーノ湖

 

 線路は北の湖岸を走る。季節は同じ2200年以上前、紀元前217年の6月、朝の濃霧に包まれた湖岸を進むローマ軍に、カルタゴの将軍ハンニバルは攻撃を仕掛けた。湖岸に沿ったローマ軍の前後を抑えたカルタゴ側は、北側の丘に潜ませていた軽装歩兵とガリア兵部隊でローマ軍の側面を襲い、ローマ軍を湖に追い落とす。ローマは執政官のひとりフラミニウスを失いほぼ全滅の大敗を喫した。

 

 湖の北西端、テロントーラコルトナで乗り換え。ここは南北の幹線駅で、ここから少しローマ側のキウージキアンチャーノテルメに向かう。アシッジから1時間ちょっとでテロントーラ着、ここは現在の州境のトスカーナ側。8分の乗り継ぎで、ローマ方向に20分走ってキウージまで、ここで11分の乗り継ぎで、単線非電化ローカル線のシエナ行きに乗り換える。今のイタリア国鉄はほぼ定時運行で隔世の感がある。

 

テロントーラコルトナ駅

乗って来た車両

乗り継ぎ列車

キウージキアンチャーノテルメ駅

 

シエナ行きのディーゼル車両

 

モンテプルチアーノ駅、モンテプルチアーノはヴィーノノービレの産地、駅は少し離れた位置

ラポラノテルメ駅、ここも温泉が有る、シエナ県には温泉が多い

トスカーナの丘陵地帯、赤い芥子の花の季節

シエナに着いた車両

 

 Google Mapで見つけたコインランドリーの場所をチェックしに行くと、その先の城門を出たところに聖フランチェスコがあった。

シエナの聖フランチェスコ聖堂、街の東側、旧市街の市壁の外

聖フランチェスコのキオストロ(中庭)

 

カンポ広場

 

知り合いのシェフからお薦めと聞いた店の場所を確認

 

シエナ大聖堂の後ろ、ここが大聖堂の洗礼堂

シエナ大聖堂

 

 大聖堂の向かい側の建物、昔の施療院サンタマリアデッラスカーラが考古学博物館も含めた総合博物館になっている。丘の斜面に立つ建築で、大聖堂側の前面は3層だが全体は5層の大きな施設。11世紀ごろから、現代で言う病院機能を持っていた。一階の大部屋は立派なフレスコ画で飾られている。

 1層下がると古い施療院の修道士や奉仕者の居住区が在り、シエナの聖人カタリナ様もここに住まわれた跡が残る。この層には現代アートの展示などがある。

 更に1層降りた最下層は崖を刳り貫いた倉庫や、死体置き場に使った空間、排水抗、下の道路から物資を搬入する通路など、大きな中世建築遺構。そこに展示室を設けて、エトルリア時代からローマ時代の考古学展示と、ローマ以後の中世展示がある。

 

 エトルリア時代のシエナについて、これまであまり研究されていない印象があった。しかしフィレンツェ方向にローマ時代のカッシア街道を15㎞ほど行ったカステッリーナインキャンティには大きな墳墓やネクロポリ(墓地)が数か所在って、どうなのかと思っていた。今回、この考古学部分で、質・量ともにかなりの展示が在る。個人所蔵だったものが多いようだが、結構良いものがある。体系的な展示から言えばトスカーナ州では、フィレンツェの考古学博物館が充実しているが、まだまだ各地にいろんなものが有る。

 大枠で言えばエトルリアがローマを作った、つまりエトルリア都市タルクィニアの植民都市だったローマが自立し、エトルリア系とラツィオ系の共住都市として成長したローマがエトルリア諸都市を糾合してローマ共和国へと発展し、ローマ帝国になる構図。シエナの名の由来は、エトルリア系でローマ貴族(元老院階級)のサイナ(或いはセイナ)家の所領だったと言う説明がある。

 

 お薦めの店へ、

 

 

 大聖堂前から近いお薦めの店は客が入り始めたところ、「日本でイタリアンをやってる知り合いから、是非と薦められた」と言うと、この店のシェフは日本でのイタリア展に行って料理をしたこともあるそうな。

 店内を周っていたシェフが「うちで日本人も何人か働いていたよ、ヨコハマの某とか・・・」、「うん、女性?ああRか?」と、「いや、この店を薦めたのは、シエナの別の店で数か月修業した人物で」。

是非と薦められたピチ(Pici:トスカーナの手打ちパスタ、細太の丸麺)の大蒜仕立て。

二皿目は「この店で定番は?」と訊いて、赤身牛肉の煮込み。ワインはグラスで、いくつか選べるので、「モンテプルチアーノ辺りのやつを」。

 ピチは、ふむ、なるほどという味。煮込みは手をかけてそつなく仕上げてあるが普通、付け合わせのポテトが美味かった。

 

 暮れていくカンポ広場でカフェ、

 

 

 

広場にはバールが並んでいる。

 

 

2018年6月のシエナ(1)終わり