祖父母が孫を誘拐

娘が、品行のよくない男性と再婚を前提に交際していて、ある日突然、子ども(祖父母にとって孫)2人を連れてその男性と生活し始めたら、娘の両親(孫にとって祖父母)としては心配になることでしょう。私自身も同様の経験をしましたので、この事例についてご紹介したいと思います。

 

娘が、再婚を前提に交際していた男性と同居して生活するため、両親の了解を得ないまま栃木県内の実家を出て、当時3歳4か月の長女と2歳年下の長男を連れて札幌市内のマンションに入居しました。その男性との再婚に反対していた娘の両親は、娘を説得して実家に連れ戻そうと考え、娘らが入居した翌日に上記マンションに赴きましたが、同所において、娘と口論となり、父親が相手の男性を殴るなどしたため、驚いて泣き出した娘の長女を母親が室外に連れ出すなどした後、翌日、共謀の上、娘の長女を上記実家に連れて行き、もって、未成年者を誘拐したという各未成年者誘拐罪の事例で、第1審判決が娘の両親をそれぞれ懲役10月に処し、原判決もこれを是認したものです。

 

両親がこのような行動をとったのは、娘の交際男性の素行が良くないということを知っていたこと、娘が前夫との離婚問題が起きて実家に戻っている最中に娘と交際していたことなどから、そのような信頼のおけない男性に娘の子ども(孫)たちを任せたら虐待されるのではないかとの不安があったからです。

 

しかし、いかなる事情があるにせよ、両親の行ったことは未成年者誘拐罪に当たります。この点について最高裁は「娘の子どもの引渡しが実現しない以上両親共に実刑を免れないとした原判決は、動機の評価を誤り、両親の原審段階における姿勢を必ずしも正当に評価せず、事案の性質や実情に照らして不当な結論を導いたものというべきであり、その量刑は、甚だしく重きに過ぎ、これを破棄しなければ著しく正義に反するものといわなければならない。」と両親の思いに理解を示したうえで、懲役10月の実刑を破棄して執行猶予としました。

 

孫を持つ年齢になれば、経験上、ある程度人を見抜く目も育っており、娘が交際している男性との会話、行動から、大切な孫を任せることはできないと判断することもあるでしょう。最高裁の裁判官も、きっとそのような両親の視点をもとに今回の事例についていろいろな角度から考察されたことと思われます。

 

今回、両親を訴えた側の娘が、人生経験豊富な両親の忠告に耳を傾け、付き合って間もない、よく知らない男性に対して愛情を訴えるだけではなく、その男性の本来の性質に目を向けようとしていれば、刑事事件まで発展するようなことはなかったと思います。

 

両親は、愛する娘、孫の幸せを願っています。両親を説き伏せることができてこそ本物の愛が貫けるのではないでしょうか。