刑法第224条には、未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処するとあります。今回ご紹介する事例は、子どもを強引に連れ去った父親が刑法第224条により逮捕されたという事例についてです。

 

夫は、妻との間に子どもが生まれたことから婚姻し、東京都内において親子3人で生活していましたが、平成13年9月15日、妻と口論した際、夫が妻に暴力を振るうなどしたことから、妻は、子どもを連れて青森県八戸市内の妻の実家に身を寄せ、これ以降、夫と別居し、自分の両親及び子どもと共に実家で暮らすようになりました。夫は、子どもと会うこともままならないことから、子どもを妻の下から奪い、自分の支配下に置いて監護養育しようと企て、自宅のある東京から子どもらの生活する八戸に出向きました。

 

平成14年11月22日午後3時45分ころ、子どもが通う保育園へ妻に代わって迎えに来た妻の母が、自分の自動車に子どもを乗せる準備をしているすきをついて、夫が、突如子どもに向かって駆け寄り、背後から自らの両手を両わきに入れて子どもを持ち上げ、抱きかかえて、あらかじめドアロックをせず、エンジンも作動させたまま停車させていた夫の自動車まで全力で疾走し、子どもを抱えたまま運転席に乗り込み、ドアをロックしてから、子どもを助手席に座らせ、妻の母が、同車の運転席の外側に立ち、運転席のドアノブをつかんで開けようとしたり、窓ガラスを手でたたいて制止するのも意に介さず、自車を発進させて走り去ったというものです。

 

その後、夫は、同日午後10時20分ころ、青森県東津軽郡の民家等のない林道上において、子どもと共に車内にいるところを警察官に発見され、通常逮捕されました。

 

しかし、妻と別居中の夫は親権者であることから、犯罪者として逮捕されることについて疑問を持たれる方もみえます。

 

この点について最高裁は、「夫は、離婚係争中の他方親権者である妻の下から子どもを奪取して自分の手元に置こうとしたものであって、そのような行動に出ることにつき、子どもの監護養育上それが現に必要とされるような特段の事情は認められないから、その行為は、親権者によるものであるとしても、正当なものということはできない。また、本件の行為態様が粗暴で強引なものであること、子どもが自分の生活環境についての判断・選択の能力が備わっていない2歳の幼児であること、その年齢上、常時監護養育が必要とされるのに、略取後の監護養育について確たる見通しがあったとも認め難いことなどに徴すると、家族間における行為として社会通念上許容され得る枠内にとどまるものと評することもできない。以上によれば、本件行為につき、違法性が阻却されるべき事情は認められないのであり、未成年者略取罪の成立を認めた原判断は、正当である。」と示したことから、父親であっても子どもを強引に連れ去るなどすれば犯罪者として逮捕されるということを明らかにしました。

 

親が子どもを愛し「子どもに会いたい」「子どもを手放したくない」「子どもと一緒に生活したい」などと思うことは自然なことであり、時には、そのような感情が高まって、冷静な判断力を失いそうになることもあるでしょうが、今回ご紹介した事例を参考にして冷静な行動に努めて下さい。