妻(母親)が身体障害者となった後、妻は、夫(父親)が家事等に協力してくれないことに対して不満を持つようになり、夫との関係は悪化、やがて耐え切れなくなった妻は、子ども2人を連れて自分の実家に帰ってしまいました。

 

その8カ月後、夫は、子どもたちが通学する小学校付近で、登校してきた子ども2人を車に乗せて、夫宅に連れて行き、以後、夫の実母の協力を得ながら子どもたちとの生活を始めました。

 

その後、妻が子どもたちの引き渡しを求めて、地方裁判所に対して人身保護請求の申立てをしたところ、原審は、夫による子どもたちの監護・拘束は、人身保護規則四条にいう権限なしにされた違法なものに当たるとの判断に立って、妻の人身保護請求を認容しました。

 

しかし、その後の最高裁では、「母が父に対し、人身保護法に基づき、共同親権に服する幼児の引渡しを請求するに際し、父の親権の行使が家事審判規則五二条の二の仮処分等により実質上制限されているのに父がこれに従わない場合、又は幼児が、母の監護の下で安定した生活を送ることができるのに、父の監護の下においては著しくその健康が損なわれ、若しくは満足な義務教育を受けることができないなど、父の幼児に対する処遇が親権の行使という観点からも容認することができないような例外的な場合には、幼児が父に監護されることが母による監護に比べて子の幸福に反することが明白であるものとして、拘束の違法性が顕著であるということができる。」と判示したうえで、原審の判断には、人身保護法二条、人身保護規則四条の解釈適用を誤った違法があり、右違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるとのことで原判決を破棄し、原審に差し戻すこととしました。

 

人身保護請求は、本来、国家等の権力や支配力を持った機関等による不当な拘束を規制するための制度であり、子の引き渡しのために作られたものではないので、もし、違う方法で子の引き渡しを求めていれば、結果も違っていたかもしれません。