授業でよく学生に話しをする。
内容は感動したことや次の世代の指導者になるもの達へのメッセージ。
身につけた運動の技能もいつかは出来なくなる。
しかし、感動はいつまでも残る。

先週の終末は、入試でバタバタしている最中だったが、
色んなスポーツで感動するシーンが続いた。

まずは、体操。
全日本選手権が行われ、その中での内村君のやったことは
通常考えられないことであった。

この大会に先立った世界選手権で前人未到の3連覇を成し遂げたが、
この試合の種目別選手権の時には世界中が度肝を抜かれた。
ぶっちぎりで優勝した個人総合。
しかし、もっと凄かったのは、その後の種目別選手権で全ての種目の難度を上げてきたことだった。
こんな大きな大会でチーム選手権、個人総合と体調も悪い中で戦い抜いてヘトヘトのはずだったのに、
さらに難しい技を入れて試合をするなど体操をやっているものなら考えられない事態だ。
しかもそれを成功させた。

それから、そんなに日も経っていない全日本で、同様に個人総合、チーム選手権そして、またまた種目別。
嘘のような光景がみんなの前で披露された。
なんと内村君は世界選手権大会の種目別よりも難しい演技で優勝してしまった。

さらに、さらに驚かされるのは、この日の演技以上の難度も既に完成に近づいているという事実だ。
床での4回捻り、伸身二回宙返り3回捻りなど。
いったい人間はどこまで進化するのか、自分の限界を楽しんでいるかの様に突き進んでいく内村。
後輩ながら尊敬するが、それも超越した世界を歩んでいる彼から目が離せない。

もう1つは、ゴルフの上田桃子選手だ。
この前のアメリカツアーの公式戦が日本で開かれ、久しぶりに優勝した。
日本で鮮烈なイメージで優勝を続けていた彼女がアメリカに挑戦してはや4年。
この間本当に苦労の連続だった。
飛ぶ鳥を落とす勢いだった女王が、予選落ちを繰り返す。腰を痛める。
もう無理かもしれない。ゴルフをやめよう。
そんな日々の中で、彼女のブログには揺れ動く心が綴られていた。
でも、どんな時でも諦めない、桃子がいた。
強がりでも、意地でも、とにかくやり続ける。

そんな、彼女はいつも試合で上手く行かないと自分を責め、自分でリズムを崩し、
負け続けた。
そんな時、決まって彼女の表情は眉間に皺をよせて、辛そうな、怒りに満ちていた。

しかし、この前の表情は笑顔で、爽やかでだった。
解説の岡本綾子さんもこんな彼女の表情は見たことがないというほど、
冷静であり、集中していて、しかも心から楽しんでいるような空気感が漂っていた。

私は、優勝の前日にこの表情をテレビで見た時、もしかしたら今回は勝てるなと予感した。
これまでの苦労に感謝し、応援し続けたファンにに頑張っている姿をみせたい、
自分の先輩や友人の言葉に耳を傾け、お母さんの誕生日を勝利で祝いたいと願ったという。
こんな彼女の思いに神様は微笑んだ。
しかし、マグレなどではない。彼女の努力の継続が生んだ当然の結果だ。
完璧を求めて上手く出来ない自分を責め続けた日々から、
人間はミスをするもの、だからそれも含めて受け入れることに気付いた。
自分のゴルフを信じ、丁寧に、あきらめないでプレーしていけば、
初心に戻って楽しめることに気付いた試合だった。

さらにもう一人に選手、テニスの錦織圭。
彼も最近コーチを変えた。
すると、めきめきと強くなった。世界ランク1位の選手にまで勝てる様になり、
ランキングも24位と過去最高に上がった。
これまで、アメリカで戦う彼は肉離れに悩まされ、なんども試合途中で棄権した。
エアー圭と呼ばれる派手なショットで注目されるも勝てない日々であった。
しかし、新しいコーチと出会い彼は変わる。

コーチは何をしたのか?
簡単なことだった。
筋トレをして、体作りから始め、
派手なプレーをやめて、粘って相手のミスを待つテニスに方向を変換した。
特別なことなどしていない。
彼の実力は元々あったけど、どうやれば自分の特徴がいかせるのか分からずもがいて自滅していた若者に
、正しい道を気付かせてくれただけだった。

我々は日々欲にまみれ、自身を過小評価し、世の中を恨み、自分の境遇を恨み、
才能がないと嘆いている。
日々の生活が苦しく、逃げ出したいともがいている。

しかし、それも少し視線を変えれば、彼らのように自由に羽ばたけるのかも知れない。
そんな、勇気と初心を思い出させてくれた選手達に感謝した週末。
スポーツってすばらしいなぁ。

改めて、自分が毎日がんばる子供達に囲まれている幸せを感じさせてもらえた。
爽やかに、今日も駆け出してみよう!