アフター 第一話 | ワンラン日記

ワンラン日記

愛知県岩倉市八剱町「ワン学習塾」の日記。
さらに、代表・犬童の「ラン日記」の二本立て。
2017年は記録足踏みも2018年こそ目指せサブ3!
BEST:10km…40:01 ハーフ…1:26:45 フル…3:10:55

 

2022年7月22日20時。

新国立競技場の客席に僕は座っている。梅雨前線による雨は朝に止んで回復するという予報は外れ、先程まで降ったり止んだりを繰り返していた。まるで今から始まる東京オリンピックが辿ってきた道のように、感染者が減ったと思いきやまたオーバーシュートが何度か繰り返されたコロナウイルスのように。

 

武藤樹16歳。現在高校1年生だ。何の違和感も与えないこの自己紹介。僕の誕生日は9月3日だ。パラリンピックの閉会式の日になる。つまり後1カ月半で17歳になる。公立高校に通う同級生は皆同い年。中高一貫の私立高校だと、従来と同じ4月2日に15歳だった世代が通っている所もある。20年度は結局留年扱いとなって、21年度にオンライン授業と分散スクーリングで中学を卒業した。結局修学旅行や体育祭はできなかった。最後の卒業式は本当に久しぶりに全校生徒が集まった。ほとんどの生徒が泣いていた。保護者も涙にくれた。先生方も泣きはらしていた。来賓は市長の挨拶がオンラインで数十秒流れただけだった。

 

あの卒業式を経験できただけで十分満足している。そして僕たちの世代と3つ上の世代。つまりコロナによって最後の学年を満足に過ごせなかった世代が招待されオリンピックを観戦できるようになった。ワクチンが昨秋に完成して、お年寄りや妊婦さん、乳幼児に並んで受験学年は優先して接種できた。この夏休み期間にすべての国民への接種が完了するらしい。まだ残っているのは40代、50代の男女。僕は誕生日を迎える頃に、接種を終えたS先生と会えるのを楽しみにしている。ずっとパソコンの画面越しに話しているが、久しぶりに生の授業を受けられるのだ。

 

競技場に入る時に外ではデモ活動が行われていた。「オリンピック開催強行に反対!」失業者があふれ、自殺率も上がり、東京でさえも商店街にシャッターが目立つ状態。そしてそれはパリでもロサンゼルスでも同様で、世界規模で「五輪反対」の声が広がっている。その半面で歓迎する向きもある。久しぶりの国際イベントである。奇しくも日本で開催されたラグビーのワールドカップ以来である。娯楽を求める人々の欲求の風船は最大限に膨らんでいる。それと共にウイルスを本当に克服したのかが試される場となる。今、新国立競技場へ世界の様々な目が向いているのだ。ちなみに北京で2月に予定されていた冬季オリンピックは来年に延期。サッカーワールドカップも2024年の冬に開催となった。予選の試合がやっと本格的に始まった所。次回のパリ五輪は2028年に延期。ロス五輪も32年。その後のオリンピックの開催は難しいのかもしれない。とにかく伊調のような4大会連続は非常に困難な記録となったといえる。

 

S先生とはこの2年半、ウイルスのことを色々と話してきた。ずっと頭から離れない話がある。

 

人類にとっては今回のウイルスの襲来が最悪のタイミングでやってきた。それは情報化とAI化の狭間だったということだ。情報化が進んだ世界だった為に、世界各国の流行の様子があっという間に世界に伝播した。自らに降り掛かる恐怖に人は正しい判断を失ってしまう。基本的には正しく怖がることを多くの人ができなかった。そして一世紀前なら受け入れたであろう「死」を極端に忌避する時代だったということだ。したがってウイルスの攻撃の中心は高齢者であったが、全世代同じように扱ってしまった。特に児童期の感染率は非常に低かった。しかし子どもを思う親の気持ちは世界共通である。結局ここまで学校現場が普通に戻ることはなかった。もしAI化が進んでいたら、こんな判断をしたのではなかろうか。「このウイルスによって死亡する人々の平均余命はそもそも4年。そして死亡者数は日本全体で2500人。10000年分の人生が消え去ることとなる。同時に経済の損失は大きい。最大1500万人が失業し、自殺者が毎年4万人台となる。子どもの4人に1人は貧困世帯となる。つまり高齢者に強い外出自粛を求め、現役世代は経済を回すのだ!」こんな判断は一見人間の心を無視しているように思う。でもこういう戦略で戦わなくてはいけなかったんじゃないかな。当然この手法は医療従事者に負担を掛け過ぎてしまうけどね。ホリエモンは何気にAIだったんだよな。だから嫌われるんだけど。

 

アフターコロナ。至る所でその文字を見る。確かに色々なことが変わった。それを順に思い返しながら祭典を楽しもうと思う。開会を告げる花火が上がった-