衛生マスクのパッケージに使用された標章が登録商標と類似し商標権侵害にあたるとして、損害賠償を求めた訴訟の判決が東京地方裁判所であった。(東京地裁令和6.1.26)

 

判決は、商標権侵害を認めた。

この判決で注目すべきことは、「お年賀マスク」が普通名称にあたるかである。

 

まず、「年賀」は、新年の祝いや年始の祝賀の意味があるとされる。

 

また、年賀と他の語句とが結びついた語句として広辞苑(第6版)に掲載されているものとして、年賀状や年賀特別郵便、年賀葉書があるが、年賀マスクという語句は掲載されていない。

 

また、新年に渡す贈答品を指す語として「お年賀」が使用され、ある程度定着していることがうかがわれること、

 

新年に渡す贈答品としてタオルが用いられることがあり、そのようなタオルについて「お年賀タオル」、「年賀タオル」などとして販売されることがあったことが認められる。

 

他方、令和3年より前に、新年の贈答品として「マスク」を渡すことは一般的ではなく、令和2年には、新型コロナウイルスによる疾病の流行を受けて、

 

令和3年の新年の贈答品としてマスクを渡すことを考える者が現れ、「お年賀マスク」という言葉が使われることがあったことが認められる。

 

もっとも、マスクは、令和3年までは新年の贈答品として渡されることは一般的ではなかったことから、それが使用される記事等においても、説明とともに、括弧を付けた上で「お年賀マスク」という語が使われることが多かった。

 

以上によれば、「年賀」については、新年にに渡す贈答品を指す語としてある程度定着し、「年賀」としてよく贈答されるタオルについては「お年賀タオル」と呼ばれることもあったが、

 

「従来、新年の贈答品としてマスクを渡すことは余りなく、令和2年の半ばから令和3年頃、『お年賀マスク』の語自体が、普通名称になっていたとは認められない。」として、普通名称ではないとした。

 

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