ファイル共有ソフト「ビットトレント」を使用してインターネット上に動画を公開することが著作権侵害にあたるとして、プロバイダ責任制限法に基づき発信者情報の開示を求めた訴訟の判決が東京地方裁判所であった。(東京地裁令和5.12.15)

 

判決は、著作権侵害を否定した。

この判決で注目すべきことは、送信可能化に関してである。

 

まず、著作権法2条1項9号の5は、送信可能化の定義について、「次のいずれかに掲げる行為により自動公衆送信し得るようにすることをいう。」旨規定し、

 

イとして「公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置(公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分(以下この号において「公衆送信用記録媒体」という。)に記録され、または当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう。以下同じ。)の公衆送信用記録媒体に情報を記録し、情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体として加え、若しくは情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に変換し、または当該自動公衆送信装置に情報を入力すること。」と規定し、

 

ロとして「その公衆送信用記録媒体に情報が記録され、または当該自動公衆送信装置に情報が入力されている自動公衆送信装置について、公衆の用に供されている電気通信回線への接続(配線、自動公衆送信装置の始動、送受信用プログラムの起動その他の一切の行為により行われる場合には、当該一連の行為のうち最後のものをいう。)を行うこと。」を規定している。

 

このような著作権法の文言や、著作権法の送信可能化を規制の対象とする行為として規定した趣旨、目的は、公衆送信のうち、

 

公衆からの求めに応じ自動的に行う送信(後に自動公衆送信として定義規定が置かれたもの)が既に規制の対象とされていた状況の下で、現に自動公衆送信が行われるに至る前の準備段階の行為を規制することであり、

 

自動公衆送信前の準備段階の行為に着目してその行為を規制したものであることなどに照らせば、「送信可能化」にあたるのは、同号のイまたはロに列挙されている行為であると解される。

 

そして、それらの行為により対象の著作物が自動公衆送信し得るようにされた場合、上記で述べたとおりの「送信可能化」の意義から、

 

「それらの行為によって自動公衆送信し得るようにされた著作物については、別途、同号のイまたはロに該当する行為がされたときに再び『送信可能化』に該当する行為がされたといえると解される。」とした。

 

そのうえで、本件においては、「UNCHOKE」(アンチョーク)の通信がされた時点において、本件動画について、更に、同号のイまたはロに該当する何らかの行為が行ったことを認めるに足りない。

 

よって、「本件調査結果に至る手法と本件調査会社の説明に基づく「アンチョーク」の通信の内容によると、直ちに本件各通信に係る情報の流通によって、複製権及び公衆送信権が侵害されたと認めることはできない。」としている。

 

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