栃木県那須町で2017年、登山講習中の高校山岳部員ら8人が亡くなった雪崩事故を巡り、遺族が県などに損害賠償を求めた訴訟の判決が宇都宮地方裁判所であった。(宇都宮地裁令和5.6.28)

 

判決は、栃木県と県高等学校体育連盟に計約2億9千万円の賠償を命じた。

この判決で注目すべきことは、本件における注意義務についてである。

 

まず、公権力の行使にあたる国または公共団体の公務員が、その職務を行うについて、故意または過失によって違法に他人に損害を与えた場合には、

 

国または公共団体がその被害者に対して賠償の責に任ずるのであって、公務員個人はその責めを負わないと解するのが相当である。

 

被告3講師はいずれも被告県の公務員たる栃木県県立高等学校の教員であり、本件講習会は、学校教育の一環として実施されたものであって、

 

本件事故は、公務員が職務行為を行うについて発生した事故であるから、被告3講師は原告らに対して賠償責任を負うものではない。

 

そのうえで、「原告らは、被告3講師及び被告高体連において、遅くとも27日の朝の時点で、那須町付近の気象情報や雪崩注意等の発令の有無などを確認し、雪崩が発生する危険性を特定して本件講習会を中止すべき義務があった」にもかかわらず、

 

これを怠って漫然と本件講習会を継行し、それによって本件事故が発生したと主張するところ、被告県及び被告高体連は、被告3講師及び被告高体連の注意義務違反(違法性ないし過失)を争うことを明らかにしていない。

 

よって、「被告県は国賠法1条1項に基づき、被告高体連は民法709条に基づき、本件事故により本件被災者ら及び原告に生じた損害について賠償責任を負う。」とした。

 

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