請求書を偽造して司法解剖の費用をだまし取ったとして、私文書偽造罪(刑法159条)・同行使罪(刑法161条)及び詐欺罪(刑法246条)に問われた近畿大学の元教授への判決公判が大阪地方裁判所であった。(大阪地裁令和5.6.14)

 

判決は、懲役5年の実刑とした。

判決内容は以下のようになっている。

 

まず、本件は法医学教室の主任教授であった被告人が、出入り業者であるB社の従業員と共謀するなどして、被告人が同社に購入または支払を依頼したゴルフ用品等の代金を医療用品等の代金に付け替えたり(第1)、

 

同社名義の架空領収書等を用いたり(第2)、同社を退職した元従業員に同社名義の請求書等を偽造させるなどして(第3)、勤務先大学から、医療用品等の立替金精算名目で合計約4900万円をだまし取るとともに、

 

被告人が行う死体解剖等の補助をしていた法医学教室講師と共謀して、警察から委託を受けて実施する死体解剖の検査料に実際には実施していない検査に係る費用を加算して不正に請求し、大阪府警察本部から合計3700万円をだまし取った(第4、第5)事案である。

 

法医学教室の主任教授という信頼のある立場にあることを悪用した巧妙かつ継続的な犯行であり、勤務先大学を被害者とする事件では請求書を偽造するなど手口を悪質化させながら、約6年という長期間にわたって詐欺を繰り返している。

 

被害額は合計8600万円余りと高額であって、結果は重大である。

被告人は、いずれの犯行においても法医学教室における最高権威者として犯行を主導したと認められ、犯行によって相当多額の利益を享受している。

 

被告人は、大阪府警察本部を被害者とする事件につき、不合理な供述に始終しており、真摯に反省しているとは認められない。

 

そうすると、「被告人が勤務先大学を被害者とする事件では公訴事実を争わず、反省の弁を述べた上で、その被害額を全額弁償していること、被告人の妻及び医師の仲間が被告人の監督を誓約していること、被告人に前科前歴がないことなどの事情を考慮しても、主文の実刑は免れない」と判断した。

 

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